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さがみはら中央区 社会

公開日:2022.07.21

福祉レポート
医療的ケア児へ「寄り添う」
コーディネーターの思い

  • 医療的ケア児等コーディネーターを務める加藤俊雄さん(左)と田極法恵さん=7月8日撮影

 人工呼吸器による呼吸管理や、たんの吸引などの医療的ケアが必要な子ども(医療的ケア児)に関する相談に応じるため市は、社会福祉法人相模原市社会福祉事業団に事業を委託し今年4月、緑区合同庁舎(緑区西橋本)と南保健福祉センター(南区相模大野)にある障害者相談支援キーステーションに1人ずつ「医療的ケア児等コーディネーター」の配置を開始した。

関係分野の支援調整

 同コーディネーターは、医療的ケア児とその家族が地域で安心して暮らせるよう、いろいろな相談に応じるとともに、ライフステージに応じて保健や医療、福祉、子育て、教育などの関係分野にまたがる支援の調整を担う。県や政令市が実施する養成研修を受けた看護師や保健師、相談支援専門員などがコーディネーターとして活動。各自治体によって配置の状況はさまざまだ。

 国は、2023年度末までに各地方自治体へ同コーディネーターを配置することを障害保健福祉施策の中で指針として示している。県内では、横浜市が2018年度から看護師6人を、川崎市は21年度から看護師・保健師4人を配置。大和市や厚木市、綾瀬市、葉山町なども運用を開始し、その他の自治体でも準備が進められている。

 相模原市でもコーディネーターの配置が検討される中、市に寄せられる相談や医療的ケア児の数が増加傾向にあることでその動きが加速。このほど、南区の障害者相談支援キーステーションに加藤俊雄さん、緑区に田極法恵さんが配された。

 もともと2人は障害のある人をサポートする相談支援専門員として各障害者相談支援キーステーションに勤務しており、新たに研修を受けて今回コーディネーターの任に就いた。田極さんは「まずは相談を丁寧に受け取りながらサポートしていきたい」と思いを語る。

軸を持ち長く関わる

 4月から2人で応じた相談は6件。保育所の受け入れや通学に関することなど内容は個々で全く異なる。「コーディネーターのコンセプトは細く長く、一つの軸を持って関わり、つながっていくこと。そのため、定期的に訪問や面会をさせてもらいたいということは提案させてもらっている」と田極さんは話す。

 「行政の窓口業務だけでは拾い切れなかった悩みや不安をじっくりと聞くことで、提案を考えられるようになった」。加藤さんはそう実感している。医療的ケア児を取り巻く環境は障害だけでなく保育、教育、児童福祉などさまざまな分野が横断しており、また成長に応じて関わる機関も変化する。「寄り添う姿勢が前提になければ。その上でどうコーディネートするか。医療的ケア児の親御さんに対し、今までの制度だけでは難しかった部分を寄り添うことで補完できれば、求められている役割の一つになる」と加藤さんは話す。

サポートのチームづくり

 業務に携わり実際に医療的ケア児や家族と接する中で田極さんは「コーディネーターだけで解決できるものは少ない」と感じているという。「解決に向けて必要なサポートをしてくれる人を集めたり、そこへ一緒に相談に行ったり、そういったチームづくりのような形が求められているのかなと思っている。いろいろな人とつながりを持ちながら、チームでサポートしていくという体制を作るところに意味がある」

 加藤さんは「ご家族からお話を聞くと、具体的な相談内容に至るまでにいろいろな悩みがあると感じることがある。今までの生活やお子さんが生まれる前の家庭環境を聞き、その中で一番困っていることを丁寧に聞き出すことがコーディネーターとして必要な部分」と語る。一方、田極さんは「当事者であるお子さんに視点を合わせ、ご本人のことを知ることが重要だと考えている。家だけでなく、保育園や学校などの様子も確認し、その上でしっかりと受け止めていきたい」と話す。

相談踏まえ配置検討

 現在、加藤さんが南区、田極さんが緑区、中央区は2人で区分けして担当。週に2回ほどは互いの相談事例を共有する時間を設けている。「始まったばかりで何とも言えないが、今後2人では難しくなってくるというのは感じている」と田極さん。コーディネーターを管轄する市高齢・障害者福祉課は、「寄せられる相談の内容や件数などを踏まえ、コーディネーターの人員配置や医療的ケア児のより良い支援策を考えていかなくてはならない」と話す。一方で昨年9月に国が医療的ケア児とその家族を支援するための法整備を行ったことにふれ、「医療的ケア児を支えていこうという機運は高まっている」と期待を込める。

 20年度に市が行った医療的ケア児の生活状況調査などにより市が把握している医療的ケア児は114人。市はコーディネーターの設置についてホームページやチラシなどで当事者家族らへ周知するとともに、「医療的ケアが必要なお子さんやその家族が地域に暮らしているということを知っていただきたい」と市民への意識啓発にも意欲を高める。

目線を合わせる

 「一人で抱え込んでしまっている人に、私たちの存在が届いてほしい。『寄り添う』存在がいるという部分に価値があると思っている」と加藤さん。田極さんは、「専門性という部分でしっかりと対応すると同時に、お子さんとご家族と、目線を合わせてお話を聞いていけたら」と話した。

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