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さがみはら中央区 社会

公開日:2025.08.28

80年が経ったという現実
相模原原爆被災者の会

  • (右から)丸山さん、歌さん、賛助会員として30年にわたり活動を支える近藤恵子さん

  • 被爆証言集『水をください』第五集は中村書店(横山)でも販売中※数に限りあり

 広島、長崎への原爆投下から今年で80年。生存する被爆者の数が10万人を下回り、平均年齢は86歳を超える中、「相模原原爆被災者の会(相友会)」は設立から50年を迎えた。会長の丸山進さん(85/南区相模台在住)は、「80年が経ち、関心が薄れてきている、忘れられてきているということは痛切に感じる」と話す。

風化、軍拡―募る不安

 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が昨年ノーベル平和賞を受賞したことで被爆者たちの長年にわたる活動が認められたものの、以前に増して世界では核兵器使用の危機感が高まっている。「ノーベル賞や80年の節目で今は少し関心が高まっていると思うが、これが続くかどうかはわからない。状況は厳しい」。神奈川県原爆被災者の会でも会長を務める丸山さんは、参院選で当選した候補者が選挙期間中に発言した「核武装が最も安上がり」との内容にも触れながら、顔を曇らせる。

 丸山さんと被爆伝承者の歌玲子さん(東大沼在住)は8月13日、「平和のつどい」(相模原市主催)で講話を行うため市立図書館を訪れた。この日は小学生から高齢者まで多くの人が集まり、座席が足りなくなるほど。丸山さんは「たくさんの人が来てくれると張り合いがあるね」と喜んだ。

「軍事に頼らずに」

 丸山さんは神戸市で生まれ、5歳の時に広島で被爆した。講話では原爆ドームから2キロほどの所にあった自宅の場所を地図で説明し、8月6日の家族の状況や、勤労奉仕の作業中に被爆して亡くなった姉についてゆっくりと語った。最後には「日本で80年続いている平和をこれからも続けてほしい。戦争は人を変える。二度と被爆者をつくってはいけない。話し合い、外交で解決することは難しいことだが、絶対に戦争はしないという思いで、日本には世界の状況に歯止めをかける、軍事に頼らない行動をしてほしい」と訴えた。

「自分に何ができるか」

 広島県出身の歌さんは、2023年から伝承者として活動。15歳で被爆し、現在も証言を続けている切明千枝子さんの体験を語り継いでいる。「広島でも風化は進んでいる。日本が戦争をしていたことを知らない子どもたちもいると聞いた。どう次世代に引き継いでいけばいいのか、もっと考えていかないと」と危機感を募らせる。

 講話では「今も戦争は世界のあちこちで続いている。この80年で世界はどう変わったか」と参加者に問いかけ、切明さんの「平和はすわっていたのではむこうからやっては来ません だまってすわっているうちにどんどん戦争の方へいってしまいます」という言葉を紹介。切明さんの凄惨な体験と平和への強い願いを感情を込めて伝えた。「無関心でいては大事な命を守ることはできない。今日を『自分に何ができるか考える』スタートの一日にしてほしい」

5冊目の証言集

 1975年に設立された相友会は、日本被団協および県原爆被災者の会の一員として、二度と核兵器が使われないことを強く訴えてきた。

 創立から今年で50年が経ち、現在は被爆者2人、被爆伝承者2人を含む5人と賛助会員で構成されている。被爆者の話を聞くことが困難な時代が近づく中、8月1日に5冊目の被爆証言集『水をください』第五集を発行した。証言集には被爆者の生々しい体験とともに、幼い時の被爆体験や二世の親の体験と願い、支援者の思いなどが綴られており、相友会メンバーたちの被爆の実相を次世代へ伝えたいという思いが込められている。

 丸山さんは「自分に残された時間はあまりないが、伝承者の方や賛助会員の方もいて大変心強い。自分ができる間は活動を続けたいと思っている。証言集は最後になると思う。ぜひ多くの人に被爆者たちの声を聞いてほしい」と話している。

 「被爆証言集『水をください』第五集」の購入希望者は丸山さん(メールmaruyama0339@gmail.com)または近藤さん(メールkondou-saori@jcom.home.ne.jp)へ。1冊500円。

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