さがみはら中央区 社会
公開日:2025.10.30
障害者ライダー箱根を駆ける
「改めてバイクが好き」
障害があってもバイクに乗る夢を諦めなくていい社会へ--。下半身が動かない人などの障害者ライダー(以下、パラモトライダー)15人が10月18日、箱根ターンパイク往復30キロメートルほどを駆け、仲間と走る喜びをかみしめた。相模原の公益社団法人SSPが主催したイベントで、参加者たちは完走後、とびきりの笑顔を見せた。
SSPは現役オートレーサーで元ロードレース世界チャンピオンの青木治親さんが立ち上げた団体。障害があってもオートバイに乗る夢を諦めてほしくないとの思いから、障害者向けの無料体験走行会などを開催している。車椅子で生活している人や全盲の人など、これまでに多くのパラモトライダーを誕生させてきた。
この日の催しはSSPにとって年に一度の大イベント。今年で4回目となった。箱根ターンパイクを貸し切ることでパラモトライダーの走行を可能にし、仲間と公道を走る楽しさを共有した。150人のボランティアや加藤憲一小田原市長らが参加した。
会場にいたパラモトライダーたちに話を聞いた。
栗本さん(49)
4回全て参加しているという栗本秀幸さんは、30代の頃に以前から興味があったバイクに乗り始めた。しかし今から10年ほど前に事故で負傷。医師から「足が一生動かない」と言われた際には「絶望した」と言う。
SSPとの出会いは5年前。インターネット上で偶然見つけ、川崎市内で開催されたイベントに参加した。当時を振り返り、「やっぱりうれしかった。絶対乗れるもんじゃないと思っていたけれど何とか乗れた。自分では考えてもいなかった」と話す。
辰巳さん(61)
今回で3度目の参加となった辰巳晃一さんは16歳の頃にバイクに乗り始め、18歳で初めてロードレースに出場した。「バイクで日本の頂点を獲ろうと思っていた。24時間バイクだった」と笑う。
ところが、19歳の頃に転倒し車椅子での生活に。スポーツが得意だった辰巳さんは、車椅子バスケに身を投じるようになった。
知人からSSPの話を初めて聞いたときは「乗る気は無かった」と言うが、56歳で初めてSSPのイベントに参加。久しぶりにハンドルを握った時のことは「アクセルを開くのが怖かった。でも、乗っちゃえば楽しいからね」と振り返る。
箱根ターンパイクでの走行は年に一度だけバイクに乗ることができる特別な日。出走前、緊張した様子を見せながらも、「ここで乗れる時間が幸せ。改めてバイクが好きなんだと気付かされる」と話していた。
「みんなヒーロー」
会場内ではミュージシャンによる生演奏が肌寒い大観山の空気に熱気を与えていた。ギターを手に歌っていたのはトリオロックバンド「ザ・グダグダーズ」の福山竜一さん。オリジナルのSSP応援歌を歌っていた。
福山さんは2024年、県内のイベントでSSPの青木代表に出会い、意気投合。「支える側も支えられる側もみんなヒーロー」という思いを込めて「Side Stand HERO」を作曲した。歌詞には「アクセルを握れば 沢山の悲しみが沢山の笑顔へと 変わり始めるはずさ きっと」とある。
福山さんは「SSPの活動があるという、そういう世の中が良くないと思う。『平和』って言葉があるのは平和じゃないからなのと同じで、こういう活動があるのは障害者がバイクに乗るのが当たり前じゃないから。難しいけど、目指すことが大事」と話した。
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