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あの日、陛下は石老山へ 関係者語る 相模原の登山

社会

公開:2019年5月1日

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石老山の山頂に到着された天皇陛下。左は秋山幸也・市博物館学芸員、右は山田正法・正覚寺住職=朝日新聞社提供
石老山の山頂に到着された天皇陛下。左は秋山幸也・市博物館学芸員、右は山田正法・正覚寺住職=朝日新聞社提供

 緑区にある石老山(せきろうざん)(702・8m)は、関東百名山の一つに選定され、気軽に登れるハイキングコースとして人気が高い。そんな石老山だが、地元では、4年前に新天皇陛下が皇太子さまの時代に登られたことでも知られている。その時の登山の様子を当時の関係者に聞いた。

 石老山は相模湖の南東にある山。約600万年前に、深さ数千mの海溝にたまってできた「礫岩(れきがん)」という種類の岩石が全山に分布し、巨岩・奇岩に富んでいることから、この山名がつけられたものと考えられている。

 巨岩は標高570mにある融合平見晴台までに比較的多く見られ、点在するその姿を眺めながら歩くのが、登山者の楽しみの一つとなっている。

晴天の11月27日

 2015年(平成27年)の夏頃。相模原市商業観光課担当課長(当時)の田中浩さん(56)のもとに、県から市秘書課を通じ、「皇太子さま(当時)が石老山に登りたいとおっしゃっている」という連絡があった。複数の関係者の話では、山好きで知られる新天皇陛下は、公務などで中央自動車道を通る際に見える石老山への登山をかねがね希望されていたのだという。

 石老山が所在する市の担当課として田中さんは、登山ルートや休憩場所など各所の手配に奔走。数回にわたり現地視察にも赴いた。そして、前日の雨が嘘のように晴れ渡った当日11月27日は、田中さんも先発隊として、陛下の前方を進んだ。

登山の拠点

 国道412号「石老山入口バス停」方面から登ると、山腹に石老山を山号とする真言宗寺院・顕鏡寺がある。同寺はこの登山の拠点となった。

 陛下は当日、車で同寺に到着。そこで着替えを済ませ、境内で準備体操をされた。岩木観定住職(82)が寺内へ案内する際に、廊下からの景観や同寺の歴史について話されたという。岩木住職は「落ち着いていらして、穏やかな印象そのままの方だった」と回想する。

ガイドは2人で

 市立博物館学芸員の生物担当として市域の動植物調査を行っている秋山幸也さん(51)は、案内役を務めた一人。「話をいただいた時は大変な重責だと感じた」と秋山さんは振り返る。「陛下は、登山をなによりも楽しまれている様子だった。周りの景色を眺めて、『あの山にはいつ、誰と登った』などと話されていた。健脚でかなり山に慣れていらっしゃる様子だった」。山の地質の話題では、プレートの名称が思い出せず秋山さんが言葉に詰まると、「フィリピン海ですか?」と助け舟を出された。秋山さんは「そのお詳しさには驚いた」と当時を思い返す。

 秋山さんが主に自然や生物を解説する一方で、郷土史のガイドを務めたのは、臨済宗寺院・正覚寺の山田正法住職(70)。山田住職は石老山の縁起や相模湖築造と湖底に沈んだ勝瀬村の話などを説明した。「山頂から下る途中の大明神展望台で北丹沢の尾根を見渡され、山の名前を順に述べられた。よくご存じだった」と山田住職は語る。

優しさに感激

 下山後には、千木良にある割烹旅館『五本松』へ移動し、入浴後、客室で昼食を召し上がった。

 主人の永井宏文さん(52)が用意したのは、この日のために考案した、地場のサトイモとゆずを使った記念メニューなど。「地元の旬野菜や、津久井のうどんなども残さず召し上がり、『どれもおいしかったです』と言っていただいた」と永井さんは振り返る。

 帰られる間際に、ちょっとした出来事があった。見送りに並ぶ永井さん一家に一人ずつ陛下が言葉をかけ、車に乗ろうとされたその時、当時小学1年生だった永井さんの息子に向かって虫が飛んできて頬を刺した。刺されたことに加え、張り詰めた緊張感の中で起こった予期せぬ事態に息子はショックで泣き出してしまった。「そうしたら、後で宮内庁から電話をいただいた。陛下が心配してくださったのだと思う」と永井さんは述懐する。

 陛下も楽しまれた地元の名峰・石老山。この大型連休にも、多くの登山客が予想される。市商業観光課では、「手軽に登れ、巨岩や奇岩といった見どころもあり、近隣の山々とはまた違った趣がある。足を運んでいただければ」と話している。

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