自然エネルギーの普及を目指し、市民が立ち上げた電力会社「多摩電力合同会社」(以下たまでん・諏訪)が来月、10年目に入る。全国でも珍しい「エネルギーの地産地消」ビジネスとして注目を集めてきた。
設立は2012年の10月。前年に起こった東日本大震災を受け、エネルギー問題について考えるようになった多摩市民を中心としたメンバーが立ち上げた一般社団法人多摩循環型エネルギー協会を母体とする。現在、代表社員を務める秋元孝夫さんらが立ち上げたたまでんは多摩エネ協が目指す循環型エネルギー社会を実現するためのいわば「事業部」。市内の各種施設から屋根を借りて太陽光パネルを設置し発電。売り出していく役割を担った。
そんな市民の手による取り組みは「エネルギーの地産地消」として注目を集めるようになったが、当初は各所から屋根を貸すことに難色を示されるばかりだったという。「民間会社などに飛び込みで訪問しても門前払いされることがほとんどでした」と今もたまでんに協力する多摩エネ協の江川美穂子さんは当時を振り返る。
信頼増し13カ所
潮目が変わったのが発足の翌年。母体である多摩エネ協の取り組みが環境省が進める地域主導型の自然エネルギー活用事業として採択され、たまでんの「信用度」が上がったことが大きかった。市内にキャンパスをもつ大学の屋根に第一号となる「市民発電所」となる太陽光パネルを設置してもらうようになると、14年には市が運営する複数の施設にも設置してもらえることに。
口コミが広まり、市内にある高齢者施設や市外の民間企業などにも設置。現在では13カ所の市民発電所が稼働している。
秋元さんはこれまでを振り返り、「たまでんの電気を買い取ってくれている東村山の会社や、太陽光パネルを設置してくれた皆さまなどの協力があってここまでやってこられた。感謝しかない」と話し、「昨年ようやく会社として黒字を出すことができ、関係者に配当金を渡すことができた。市民から生まれた自然エネルギーの活用事業としてのモデルの1つにはなれたのではないかな」と微笑む。
あと10年
一方で、秋元さんはたまでんの活動はおよそあと10年間ぐらいと言い切る。市民発電所の契約年数がそれぞれ20年間で、以後は太陽光パネルを設置するかどうかは各施設、住宅の判断になるという。
「それまでしっかり市民発電所を運営していくことが我々の仕事。新しい発電の可能性も探っていきたい」と話している。
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