ついに歓喜の時が来た。かつて「関ヶ原の合戦」が行われた9月15日。プレーオフ第3戦。引分け以上で、なでしこ2部リーグの昇格圏内の2位以上が決まる大和シルフィードは、広島に2対1で勝利、優勝を争っていたFC十文字が引分けたため、チャレンジリーグの優勝を決め、昇格を決定的にした。2年続けてプレーオフで苦杯をなめていたシルフィードにとって、3年越しの悲願達成となった。
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試合開始前から降り続く雨の中、勝利を信じて集まった700人近いサポーターに対し、シルフィードの選手たちは、今シーズンを象徴するようなハードワークで応える。試合前から相手のWEST1位・広島をリスペクトしつつ、必ず勝つと話していた藤巻藍子監督は「押し込まれるのは想定済。我慢していれば必ずチャンスはくる」と冷静に分析していた。
藤巻の予想通り、相手の猛攻を凌いだ後の前半20分。左サイドを駆け上がったNo.8・大家梨緒の放ったシュートがそのままゴールに吸い込まれる。待望の先制点に、チームは一気に活気づく。10分後、No.18・市原理奈がゴール前で競り勝ち、2点目をもぎ取った。
しかし好事魔多し。2点差の勝利で十文字に大きなプレッシャーが与えられると思っていた後半のアディショナルタイム。残りワンプレーというところでまさかの失点。勝利したにも関わらず、選手たちはまるで負けた後のような悔しさをにじませた。それでもサポーターから「おめでとう」「よくやった」の声が飛ぶ。選手たちは、気持ちを切り替え、感謝の言葉を手書きしたお揃いのTシャツを着て、いつもの笑顔で勝利のダンスを披露した。
運命の3時間。そして歓喜、胴上げ
試合終了から約1時間後に始まったFC十文字対福島戦。十文字の「2点差以上の勝利」以外で、優勝と自動昇格の権利が決まる。シルフィードの選手たちは、結果をスタジアムで待った。
前半、十文字が先制。選手たちに緊張が走る。「考えると胃が痛くなるので、考えないように、用具の片づけとかしていました」(藤巻監督)。後半、福島が同点に追いつく。仮に十文字が2対1で勝利しても、シルフィードの1位が決まる。「このまま早く終わってほしい」という岡森香沙音主将を筆頭に選手たちは、ただひたすらタイムアップを待ち、祈り続けた。
午後3時55分、そのままタイムアップ。シルフィードの選手たちは、グラウンドに飛び出し、歓喜の輪を作り、藤巻監督を胴上げした。
「優勝監督にしてくれてありがとう」。大木哲市長らを迎えた報告会で声を詰まらせた藤巻監督。「試合に出ていない選手たちのサポートがありがたかった」とチーム全員で掴んだ優勝を喜んだ。ただ一方で「このメンバーで2部リーグを戦いたいので、もうちょっとレベルアップしよう。このままじゃ戦えないよ」と苦言を呈することも忘れなかった。
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シルフィードは2015年、県リーグからチャレンジリーグEASTに昇格。翌16年には早速プレーオフで2位となり、なでしこリーグ2部昇格の入替え戦に望んだものの、惜しくも苦杯。昨年は、辛くもプレーオフに進んだものの、勝ちあがれず、涙をのんでいた。
今シーズンも当初は苦しい戦いが続いた。4月15日のホーム開幕戦で、北海道相手に逆転負けを喫すると、なかなか波に乗れず、第7節を終わって2勝3敗2分けの4位と低迷。それでも藤巻監督の気持ちはぶれなかった。シーズン当初から「走り負けない」「球際に厳しく」といったハードワークができている、という自信もあった。主将の岡森香沙音も「あと一歩の粘りがついてきた。精神面で強くなった」とチームの成長を語った。優勝を自信に、来シーズンは新たなステージで暴れてくれることだろう。
【文中敬称略】
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