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厚木・愛川・清川 コラム

公開日:2022.11.04

祈りを込めて

 扉座の公演があります。3年前に初演して好評を頂いた『最後の伝令 菊谷栄物語』をブラッシュアップします。菊谷栄は昭和初期、大衆文化のメッカだった浅草で一世風靡した喜劇俳優・榎本健一エノケンの片腕と言われた劇作家です。その人が中国で起きた最初の戦闘に招集され、兵士として戦死してしまう。もし菊谷が生きていたら日本のミュージカルは50年早く進化しただろうと語られる才能の持ち主でした。

 3年前には想像もしなかった悲惨な戦争が今、ウクライナで起こっています。ロシアの横暴な武力侵攻は、かつての大日本帝国の大陸侵略と似ていると感じるのは決して私だけではないでしょう。80年前、我が国は同じような過ちを犯し、その罰であるかのように、闘いとは最も遠いはずの大衆文化の担い手・菊谷栄を生贄としてしまったのです。

 私と扉座の作風は社会派とはほど遠いエンタテイメント志向です。演劇で声高に思想や政治理念、主義主張を述べることは苦手だし、むしろ嫌いです。メッセージや主張がないわけではないけれど、それを笑いや涙に変えて、感動とともにお客様と分かち合いたい。

 それでも今という時代を生きて表現活動をしていると、時にこういう巡り合わせがやって来て、芝居を以て現実と真剣に向き合わざるを得ない時がやって来ます。それが今回の公演です。全身全霊で平和への祈りを込め、この公演に臨みます。

 

劇団扉座第74回公演「最後の伝令・菊谷栄物語」12月10日(土)・11日(日)厚木市文化会館、13日(火)〜18日(日)新宿東口紀伊國屋ホール。詳細はHP。

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