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厚木・愛川・清川 コラム

公開日:2023.06.02

家族と他人

 先日、稽古場で急病人が出て救急搬送の事態が起きた。倒れたのはベテラン俳優で古くからの芝居仲間だ。私は搬送先に責任者として駆け付けた。受け入れ先探しに時間がかかって、すでに日付の変わる時刻だった。

 倒れた時、かなり苦しんでいたので限りなく心配であった。北海道に住むお兄さんには何とか連絡を付けた。俳優は都内一人暮らし、他に肉親はいない。

 検査など、長時間待たされた後、看護師さんが来て、命の危険はないと思われるが、集中治療室で様子を見ることになると告げられた。

 そして「細かいことはご家族にご連絡します」と。

 詳しく状況を把握したかった。お兄さんにもご迷惑だろうと考えた。お兄さんは遠く、対して私は直ぐ近くにいるのだ。

 「私たちは古い仲間で、家族同然のつながりなのです」と訴えた。しかし「お気持ちは分りますが、規則なのでご家族にしかお話しできません」と言われ、不安の中で帰宅を余儀なくされた。幸い大事には至らず、翌日には本人からもラインが来て、事なきを得たのではあるが。

 たとえば婚姻が認められない同性カップルの苦悩と悲しみがよく分かった。どんなに愛し合っていても、夫婦という立場がないと、規則によって大事な事も知らされず居場所すら与えられないのである。倒れた本人からしても、最も側にいて欲しい人には会えず、遠い肉親に迷惑をかける。

 恋人なら気が狂うだろう、と思った。

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