厚木・愛川・清川 コラム
公開日:2023.08.11
七・三という場所
今月の歌舞伎座第三部の演目は『新・水滸伝』。私の作品です。明治座の『隠し砦の三悪人』と二作、同月にかかるという珍しくも光栄なことになっています。二つの劇場、ともに歴史のある大劇場ですが、通常の小屋と違う共通点は花道があることです。今回の上演ではその花道をフル活用しています。
さて花道とは、客席奥から舞台に向けて真っすぐに伸びる一本道で、俳優の登退場がとても華やかになる場所です。演出効果として使うことも多く、必ずしも大看板の役者しか通行が許されない、なんてルールはありません。しかし目立つので役者にとって栄光の道です。その道の中でも特に大事なポイントを「花道七・三」といいます。鳥屋口と呼ばれる登場口から、舞台に向かって進んで、本舞台に入る少し手前で一度立ち止まる場所。歌舞伎では、そこで見得をしたり、名台詞を言ったりします。ちなみに歌舞伎では「見得を切る」とはいいません。「見得をする」が正しい言い方です。
此処でパフォーマンスをすることは、スペシャルな演出で、限られた役者、役柄だけに許される「映えポイント」です。通行は誰でも可だけど、七・三こそ選ばれし者の特権なのです。そして相応の実力と風格が伴わないと止まっても絵にならない。花道を立派に歩く、その先には七・三の姿がサマになるという境地があるのです。
この夏、花道のある芝居小屋に是非!
『新・水滸伝』/宙乗り、立廻り、痛快娯楽大作。歌舞伎座公演は8月27日(日)まで。
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