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厚木・愛川・清川 コラム

公開日:2023.10.06

家族

 串に刺さった焼き鳥をどう食べるか。ただ串を持って頭から食らいつけばよい。と思うあなたは劇団というものを知らない。劇団の飲み会では、焼き鳥は常に皿の上でバラされている。串に刺さって届くや否や、問答無用で若手団員がササミもレバーも、すべてバラバラにしてゆく。ネギマも解体される。バラけたら、単なる鳥肉とネギになってしまうが、お構いなしに作業は進む。

 落語で、粋がった江戸っ子が、オイっ蕎麦食うのにベチャベチャつゆに浸すんじゃねえよ!こんなものはなァ、先っぽをちょっとだけ付けて、一気に啜るんだ!と言っておきながら、死ぬ間際に「一度でいいから、思いっきりつゆに漬けて食いたかった」というオチがある。

 私たちは、一度で良いから焼き鳥を串で食ってみたいと思っている。

 もっとも長く生きていると、うっかり高級焼き鳥店に招かれたりして、串そのままの焼き鳥と向き合うこともある。当然、誰もバラさないから、小洒落たカウンターで一本を食べる。しかしどこか落ち着かない。一本丸っと食べるんだから、さぞ美味であるはずなのに、むしろ何か味気ない。バラバラにされた色んな肉片を、一粒一粒競い合って拾ってる方が旨い気がしてしまう。

 まあ早い話、劇団の飲み会はワアワアやるのが肝で、味は二の次だということだ。でも家族がバラバラにされている現代、こういう大家族の飯は、懐かしく、味わい深いのだろう。

幻冬舎プレゼンツ『扉座版・二代目はクリスチャン』11月28日〜12月3日。新宿紀伊国屋ホール。チケット発売中。詳細は扉座HPへ。

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