横須賀・三浦 トップニュース社会
公開日:2026.10.09
苦境に耐え守る銭湯文化 無料券で行政も支援
10月10日は「銭湯の日」。全国的に銭湯の数が激減する中、横須賀市や三浦市でもピーク時の約10分の1にまで減少した。厳しい経営環境下で、経営者らは市民の生活衛生を守ろうと懸命な努力を続けている。
全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によると、組合に加盟する全国の銭湯数は1968年の1万7999軒をピークに減少。健康ランドの台頭や後継者不在が主な要因で、現在は1493軒にまで落ち込んでいる。
横須賀も例外ではない。横須賀浴場組合連合会(泉徳治会長)によると、市内の銭湯は60年代の約100軒をピークに激減して現在は10軒。三浦では1軒のみだ。
人口減少や内風呂普及に伴う利用客の減少による収入減に加え、経営者にとっては設備面の負担も重い。銭湯にはボイラーやろ過装置といった高額な設備が多いため、老朽化による故障時の多額な修理費用が引き金となり、廃業に追い込まれるケースもあるようだ。
政令市除き最多
こうした中でも、横須賀にある銭湯の軒数は、神奈川県内では政令指定都市の横浜市と川崎市を除くと最も多い。全盛期に比べて減ったとはいえ、県内では比較的多くの銭湯が営業を続けている地域だ。
大半の家庭に内風呂が普及した現代においても、根強い銭湯ファンが存在しているのは横須賀も三浦も同じ。高齢者を中心に日常的に足を運ぶ常連客が銭湯の存続を支えている実情がある。
大浴場は格別
横須賀の銭湯で客の約2割が利用している「ふれあいサポート券」は、市が65歳以上の一人暮らしの高齢者に配布しているもの。銭湯の入浴料などを補助するもので、これが銭湯への間接的な経営支援につながっているという。
サポート券を利用して月に数回銭湯へ通う市内在住の野村和夫さん(78)は、「家に風呂はあるけれど、足を伸ばしてゆっくり湯につかるのは格別」と、大浴場ならではの魅力を語る。
泉会長は「リタイアした高齢者にとっては、銭湯に行くことが生活リズムの維持につながっているようだ」と話す。
さらに、「裸になれば上下関係も利害関係もなく、気楽な雰囲気も魅力なのではないか」と、銭湯が憩いの場としての役割を果たしていることに言及。「地域の皆さんのイキイキとした生活を支えるためにも、今後も銭湯が存在し続けられるように努めていきたい」と語っていた。
客の笑顔に消せぬ温もり三浦で最後の銭湯
家庭の内風呂がまだ珍しかった1950年代、三浦市には10軒以上の銭湯が点在していた。しかし時代の変遷とともに姿を消し、現存するのは石川雅司さん(70)が店主を務める「クアーズMISAKI」(天神町7の11)のみ。燃料費高騰などの困難に直面しながらも、今年創業70周年を迎えた。
1956年の創業時の名称は「富士見館」。旅館と銭湯が表裏でつながる構造で、マグロ漁師の宴会や地域の結婚式会場としても利用され、銭湯も一番風呂を待つ列ができるなど、三崎の活気を支える存在だった。
しかし、先代が交通事故で突然他界。家業を助けるべく板前として旅館の厨房に立っていた雅司さんは、30歳で急遽経営を担うことに。三崎に入港するマグロ漁船の減少もあって銭湯に一本化することを決め、1990年の建て替えにあわせ、ドイツ語で“療養の家”を意味するクアハウスをもじった名称に変えた。
厳しい肉体労働
正午に開店準備を始め、午後10時30分の閉店後はデッキブラシを片手に浴槽や洗い場を磨く。ようやく自分の汗を流し、布団へ潜り込むのは深夜1時過ぎ。そんな生活が30年以上続く。
3年前に脊椎狭窄症を発症。猛暑下のボイラー室での点検など、年を重ねるごとに過酷な作業が負担となり、「いつまで続けられるかな」という思いがよぎる。
しかし、常連の高齢者たちが湯上りに談笑する様子を番台から眺めては、「銭湯は地域の社交場。生活の一部として利用してくれる人たちを想うと、簡単にはやめられない」。体に鞭を打ち、「まずは80歳まで」と今日も客を迎える。
鷹取温泉音楽演奏 独特の残響
廃業した銭湯を別の目的で活用していく事例は全国でも増えている。高い天井と広々とした脱衣場、浴槽やタイル、壁面に描かれている銭湯絵などを生かしてカフェやイベントスペースなど多様な用途に転用していく試みだ。
2019年に営業を終えた「鷹取温泉」(横須賀市鷹取1丁目)は、音楽ライブが開けるレンタルスペースとして貸し出すユニークな取り組みを行っている=写真。浴槽だった場所に板を張り、ドラムセットやアンプを設置。利用者からは「独特の響きが面白い」といった声が上がっている。
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