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三浦 人物風土記

公開日:2017.08.04

戦争の語り部として平和啓発活動を行う
高徳 えりこさん
上宮田在住

記憶を継ぎ、平和な世へ

 ○…何気なく過ぎていく当たり前の日々、その礎は何によって成り立っているのか。市内の平和啓発イベントや学校で戦争の記憶と命の尊さを後世に伝える語り部活動を本格的に始めて半年以上経った。「今、自分が出来ることは何か」。語りの最後を締めくくる一言が聞いた者の心に問いかける。「『今を大切に生きる』。それだけでもいい。感じ、行動する人を増やしたい」と展望を話した。

 ○…戦争体験者ではないということは、語り部となる上で不安だった。しかし、誰かがやらねばいずれ途絶えてしまうなら、私が届けよう。届ける使命があるのではないか―との思いが突き動かした。きっかけは特攻隊として17歳の若さで命を散らした伯父の存在。偶然目に留まった1冊の本の表紙。子犬と人形を抱いて微笑む青年に既視感を覚え、母や親族に尋ねるとそれまで語られることのなかった伯父の話を知らされた。「遺族の視点で語り継いでいく。それが供養にもなるのではないか」

 ○…一瞬で人生が変わる恐怖と家族を奪われた悲しみ。「悲劇は繰り返してはならない」と心に固く誓ってから、少しでも理解を深めようと資料を読み、体験者の話に耳を傾けた。伯父の足跡をたどり、出撃までの時間を過ごした寺などをめぐる慰霊の旅にも出た。「なぜ命を落とさせねばならなかったのか。笑顔の下で何を思ったのか」。70年前の記憶に触れるたび、溢れ出た感情は詩にしたため、自作の歌に。昇華させた思いは共感の輪を広げている。

 ○…道徳教育の一環として、今年2月から中学校での平和学習が実現。授業後に生徒から寄せられた感想に気付かされることも多いという。「『平和は勝手に続くものではない』。そう書く子もいた」と感慨深げに笑みをこぼす。「伝えることに価値があるはず」。「種まき」と称す語り部の活動に明確なゴールはないが、まいた種は1つずつ着実に芽吹いている。

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