クラリネット奏者として活躍する 吉川裕之さん 下宮田在住 36歳
演奏家の矜持、胸に秘め
○…「今、この瞬間、世界中で流れる音楽のなかで一番美しい音色を奏でる」。かつての師事先での教えを胸に刻み、音楽と向き合う。最大の魅力と語る、音色の優しさに魅了されて20余年が経つ今も、「1日でも休むと(演奏技術の衰えが)不安になる」という根っからの音楽人。その相棒はクラリネットだ。
○…「初声中学校では部活に必ず入らないとならず、でも運動は苦手。消極的理由で兄と同じ吹奏楽部へ」。それでもできるようになるのが嬉しくて「練習が好きだった」と懐古する。また、顧問の土屋和彦さんの存在も大きい。全日本吹奏楽コンクール中学校の部2年連続金賞受賞を経験したが栄光の影には厳しい練習があった。唯一、褒められたのは卒業後、年度末の定期演奏会を終えたとき。「お前の才能は抜群だ」。音楽人生の礎を築いた一言だった。
○…18歳からフランスへ留学。6年間、練習に明け暮れ、演奏家としての自尊心も芽生えた。例えば「拙い演奏ですが…」「未熟な点もありますが…」など、日本独自のへりくだる表現。伸びしろは大事だが、観客に喜んでもらうためには、自分の音楽に自信を持って届けなければならないと学んだ。「知り合いのフランス人が『日本人はつまらない物ですが…って言うけど、ならば良い物頂戴よ』と。それと同じで」と笑う。
○…数多くのレパートリーのなかで、とくに”現代音楽”を好む。休符を多用したり、音程に合わせて楽器を動かしたりと、音だけでは表現できない音楽という先鋭的かつ哲学的な要素が魅力だという。現在は、関東近郊での演奏活動や後進の育成に力を注いでいるが、「ゆくゆくは現代音楽の楽しみ方を多くの人に広められたら」と未来を見据えた。
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