湘南海上保安署署長に就任した 吉野 英二さん 57歳
正義感胸に海守る
○…江の島島内に事務所を置き、東は鎌倉市、西は湯河原町までの海上を管轄する海上保安庁第三管区海上保安本部湘南海上保安署。この春から同署署長に就任し、海の警察として日々、犯罪の芽や海難事故に目を光らせている。主な業務は管轄区域内のパトロールや救難活動。海上事故の緊急通報番号である118番や、海上レジャーでの注意点などを広める啓発活動なども行う。全国でも事案発生件数の多い第三管区で、司令塔として14人のメンバーをまとめる。常に緊張感を持って共に任務にあたる署員に対し、労いや感謝の言葉を忘れない。「辛いこともあるはずだが明るく、使命感に溢れた者ばかり」と仲間のことを誇らしげに話す。
○…埼玉県出身。「海を眺めていると心が洗われるような気持ちがする」。幼い頃に父と訪れた江の島水族館や海水浴場が印象的で海を好きになり、加山雄三のファンになるなど湘南に憧れを抱いた。海に携わる仕事がしたいという思いと、警察官をしていた父の正義感を継いで23歳の時に海上保安庁へ入庁。警備課で廃棄物の不法投棄の取締りや、警備救難部救難課運用司令センター署長などを経験した。家庭では妻と長女、愛犬と暮らす。「職業柄、常に有事に備え、転勤も多かった。これまで仕事を続けてこられたのは、家族の理解と協力があったおかげ」と家族愛を語る。
○…密漁や不法投棄に頭を抱える漁師や、海難事故で人の死に立ち会うなど、歯がゆく辛い場面にも数多く遭遇してきた。「海はみんながルールを守って安心して楽しめる場所であるべき。海でまじめに働く人が損をしてもいけない」。物腰柔らかだった口調が強まった。胸に抱く正義感が海上保安官としての自らを支えてきたという。誰もが楽しめる海の平和と秩序を保つため、今日も奔走し続ける。横浜市戸塚区在住。