1964年東京五輪の競歩50Km種目に出場、日本人最高の順位を記録した 江尻 忠正さん 藤沢在住 79歳
歩み支えた鍛錬
○…49年前の東京五輪、30歳で50Km競歩に出場した。9月8日の早朝、2020年東京五輪開催決定の報道を受け「もちろん嬉しかった」と目を細める。ただし「選手たちにとって、ここからが正念場。どれだけ熱を絶やさずいられるかが大切」と経験者ならではの厳しさも見せる。
○…国民の希望を背負い、挑んだ五輪のレース当日は土砂降りの雨。トラックでは爪先が地面にめり込み、コースとなった甲州街道も足元がぬかるむ悪条件だった。「雨は勝手に降るもの。心身を鍛えていれば、周囲に惑わされることはない」と実力を出し切り、日本選手で最も優秀な22位でゴール。当時は工場勤務のかたわら、朝練や通勤路、退勤後の練習で約80Kmもの距離を日々歩いた。積み重ねた努力が、土壇場で自分を支えたという。
○…「昔の事だからね。体ひとつでできる陸上が環境に合っていた」と中距離や長距離、駅伝などを経験し、後に競歩に絞って数々の大会で活躍。約20年前から、妻の両親が住む藤沢へ。長年歩き、世界の舞台にも立った体験を生かし「外に出て歩けば、住む街の良さに気付く。楽しみを広げてほしい」と、藤沢市歩け歩け協会(現・湘南ふじさわウォーキング協会)の活動に携わってきた。県と全国のウォーキング協会でも要職を務め、半世紀以上「歩き」を見つめてきた結論は、「正しい歩き方なんて無い。しかしその人にとって最も良い歩き方は見つけられる」。経験と知恵は惜しみなく伝えている。
○…妻と愛犬とともに暮らし、現在も月に1度はウォーキング協会の活動に参加。7年後の五輪は「さすがにこの歳だから、観戦には行かないかな」と苦笑い。「最後に自分を支えるのは、積み上げた心身の鍛錬。頑張れとは言わない、ベストを尽くしてほしい」とエールを送り、日本選手たちの新たな一歩を見守る。
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