1月26日に創流50周年舞踊会を行う「小桜流」の2代目家元を務める 小桜 すま子さん 南藤沢在住 64歳
あくなき稽古に果報あり
○…流行歌に振りを付けて踊る「新日本舞踊」の草分けの母が創流した「小桜流」。2代目家元を襲名し、湘南にとどまらず、カナダや韓国にも支部を置き、踊りを通じた文化交流に力を注ぐ。約150人の会員を有し、毎年2回の舞踊会やゆかたまつりも盛大に執り行われる。「流派の振付けを忠実に再現するのはもちろん、美しい姿勢を意識して踊る。稽古は嘘をつかない。継続していくことは何よりも強い」。50周年舞台を前に、稽古に熱が入る。
○…横浜生まれ、逗子育ち。自宅に弟子が出入りし、小唄や歌謡曲がもれ聞こえてくる中、自ずと舞踊の道へ。母の稽古と並行して、11歳から約10年、「坂東流」へ修行に出された。「踊り一筋の母は、厳しく几帳面で、きちっとしていないと叱られた。正直怖くて緊張した」と、まさに厳しい師弟関係だった。学校卒業後は美容師として茅ヶ崎で独立し、家事に子育て、舞踊と”4足のわらじ”を履く日々。「それでも、我が家では稽古が一番。稽古と言えば、誰も何も言わない」と笑う。
○…25年前、知人から「カナダで稽古を」と懇願され、会社勤めの夫を残し、子ども4人を連れて海を渡った。「英語もダメだったけれど、何とかなるって。決めたと決めたら、やらなきゃ気が済まない性分で」と微笑む。十分過ぎる程の稽古を積んできたが、異文化の地では、「もっと稽古していれば良かった、日本について何も知らない」と衝撃を受けた。そこで着物や和食、日本文化を猛勉強し、味噌や納豆まで手作りしたという。
○…再び転機が訪れたのは、母が病に倒れた10年前。襲名が決まり、単身で帰国した。人脈も無く、考えの違いに苦労したが、「先代のお弟子さんに助けてもらった。今があるのも力添えがあったこそ」。カナダに住む5人の孫も舞踊をたしなみ、「踊りのこととなると、家族の心がビタッと一つにまとまる」と幸せそう。脈々と受け継がれる舞踊へ思いは、太く固く結ばれている。