藤沢 人物風土記
公開日:2015.04.10
藤沢産の豚肉を使用した「ふじさわ生豚(なまはむ)」を生産し、4月から販売を開始した
高橋 睦さん
(有)NORMA代表 46歳
「食文化に一石を投じたい」
○…藤沢で生育した豚肉を、藤沢の気候で熟成させた「生ハム」を商品化し販売を始めた。食品添加物は一切使わず、材料は豚のモモと塩のみ。「恵まれた藤沢の気候風土が味付け」と地元の味にこだわっている。全国的にも名産品には珍しい生ハム。その商品化には新名物への期待と、「新しい食の提案を試みた」という地元食文化に対する挑戦心も含まれている。
○…6年ほど前、自身が鵠沼石上で経営していたイタリアンレストランで「新しい地元の家庭の味」を提供したいと始めたのが、手製の生ハムと魚醤づくりだった。試作を重ね、魚醤は「鵠沼魚醤」として約3年前に商品化に成功。昨年は5千本を売り上げ、認知度も人気も高まりつつある。生ハムは、1年以上の熟成期間が必要。試作段階では「いざ切ってみると中が腐っていた」「塩分調整が悪くしょっぱすぎた」と失敗の連続だったという。「大したことではない。ひとつの商品を作るのに5年10年はかかると覚悟していた」。昨年には、生ハムづくりに専念するため、打戻に工房を構え、商品を作り上げた。
○…鎌倉で生まれ育つ。大学を卒業し、5年ほど旅行会社に勤務。ツアーで旅先の名物料理を案内すると、みんなが笑顔になり喜んだ。「食文化は面白い」と印象付けられたという。その後、飲食店を開き食を追求してきた。「地域によって醤油やみその味が違って当然。藤沢でしか味わえないものが面白い」。地域の風土や特性を食で表現しようと探究している。
○…愛車は年代物のフィアットとフォルクスワーゲン。コーヒーは生豆から火入れをして淹れないと気が済まないのだとか。車の振動やエンジン音、コーヒーの香りや味、なんでも五感で楽しむのが自分流だ。生ハムづくりで、心の片隅にあるのは「藤沢の食文化に一石を投じたい」という思い。新たな藤沢の名物づくりを目指し、自分の流儀を貫き通す。
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