古代の文様「双脚輪状文」の研究で博士号を取得した 加藤 俊平さん 本藤沢在住 79歳
尽きぬ古代への探究心
○…6世紀、古墳時代のわずか100年の間に出現した「双脚輪状文(そうきゃくりんじょうもん)」と呼ばれる古代の文様の研究を積み重ね、79歳で博士号を取得した。災いを避ける効能があるとして古墳の壁画などに描かれたという未知の文様。その謎を解明しようと、実態や特徴、関連した民族、伝播の背景まで緻密に調べ上げ、論文にまとめた。「努力したと褒めてくれる人もいるが、私は好きなことを好きなだけ続けただけ。とても面白かった」と微笑む。
○…若い頃から古代史が好きで「いつか考古学を勉強してみたい」と考えていた。社会人のころは仕事が忙しく、定年してからも親の介護が続いた。自分の時間がつくれたのは、古希を迎えた70歳。尊敬していた考古学者の教授を慕って東海大学大学院に入学し、出会ったのが「双脚輪状文」の原型となる沖縄・奄美地域に生息する貝「スイジガイ」だった。沖縄などでは魔除けとして軒先に吊るされていたが、それが図柄となり、九州から東北・福島まで伝わった。「全国各地で同じ図柄の痕跡が見られる。すごいロマンを感じた」。研究に熱中し、九州や近畿地方など、遠く現地へ行き文献を調べ歴史を紐解いていった。
○…好きなことには夢中になる性格で、大学時代は釣りにはまり、一週間静岡と千葉の間の海を釣り歩いた。長年勤めた横浜市役所では、港北区に伝わる昔話を中心に、地域の風土や歴史などを調べ上げ一冊にまとめた。「仕事とは全く関係ないことだったけど、好きなことは大変と思わなかった」と笑う。
○…生まれは茅ヶ崎市。平塚との境、馬入川の近くで育った。川に遡上するシラスに似た稚魚やアサリのように大きいシジミを捕まえて食すなど遊びの中で好奇心を養った。「まだまだ知りたいことがたくさんある。あと10年は続けたい」。今後は文様の周辺で起きた史実を調べたいという。探究心は尽きることが無い。
|
<PR>