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戦後70年企画 第2回 「戦後を生き抜くことも闘いだった」 市内在住 御崎稔子さん

教育

掲載号:2015年3月20日号

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浦野昭子さんと御崎稔子さん(右)
浦野昭子さんと御崎稔子さん(右)

 第二次大戦の終結から今年で70年。大きな被害を免れた鎌倉だが、市内には戦火をくぐり抜け、戦後、移り住んできた人も数多い。市内在住の御崎稔子さん(84歳)もそうした1人。「これまで人前で戦争の話をすることはほとんどなかった」という御崎さんだが、知人で鎌倉平和推進実行委員会委員長の浦野昭子さんの紹介もあり、今回その体験を初めて語った。

横浜大空襲を経験

 御崎さんは満州事変が起きた1931年、横浜で生まれ、女学校2年生の時に学徒動員で日立戸塚工場へ派遣された。「機銃掃射にあったり、朝の点呼の度に欠席や行方不明の生徒が増えたりして。日々状況が目まぐるしく変わった」と当時を振り返る。そして1945年5月29日、横浜大空襲を迎える。

 朝9時過ぎ、500機を超えるB29爆撃機の襲来を受けた横浜。「焼夷弾がシャー、シャーと音を立てながら降り注ぎ、不発弾が鈍い音を立てて次々と地面にめり込んだ」。焼夷弾の黒い油を頭からかぶり気がおかしくなった女の人、機銃掃射を受けて倒れた母親にすがりつく子ども、地面に転がった焼死体―地獄のような光景を横目に山へと逃れると、眼下には火の海が広がっていた。

 家や学校もこの空襲で焼け「10日ほどして焼け野原にバラックを建て、そこで妹が生まれました。産湯は破裂した水道管からとった」と当時の様子を昨日のことのように話す。

戦争で一変した生活

 戦前、御崎さんの父は現在の横浜市保土ヶ谷区にあった「帷子葡萄園」に勤めていた。甘口の赤玉ポートワインなどが一般的に流通していた当時、渋みも苦味もある本格葡萄酒を製造し、1942年には234キロリットル以上の生産量を誇った、全国でも有数のワインメーカーだった。

 一家も比較的裕福な生活を送っており「お茶やお花を習い、家族でたまに行くホテルで、オムレツを食べることが何よりの楽しみだった」。そうした生活は、終戦を機に一変することになった。

 同園は戦後、競争の激化などもあり廃業。職を失った父に代わって、一家を支えたのが御崎さんだった。「それこそ昼夜なく働きました。私にとっては戦後生き抜くことの方が大変だった」と明かす。

 当時としては少し遅めの34歳で結婚。出産を経て42歳で夫の実家がある鎌倉に移り住んだ。

戦争体験を振り返って

 「幼い頃は軍国少女でしたから本気で竹槍の練習をしていたし、日本が勝つと信じていた」と御崎さん。工場にいた時、「兵事係」として、同じように動員されていた男性に召集令状を手渡したこともあった。「渡すとき、心から『おめでとう』と思っていた。あの時のことを思い出すと今でも胸が痛みます。学校や新聞、ラジオで誇り高い日本人として正義の戦いに命を捧げるよう教育を受け、それだけ染まっていたんですね」と振り返る。戦後しばらくは、米兵や以前とは手のひらを返したような態度をとる日本人にも悔しい思いが消えなかったともいう。

 これまで家族以外に自らの戦争体験を語ったことなかったという御崎さんが今回、本紙の取材を受けるきっかけとなったのが、月に1回、共通の友人らで開催されている朗読会で知り合った浦野昭子さんの存在だ。浦野さんは、鎌倉市平和推進実行委員会の委員長を務めており、戦争体験者による子ども向けの講話会開催や映像化を進めている。浦野さんとの出会いを通じ「この歳になってようやく戦争について冷静に語れる気がした」と心境を明かす。

 「もし戦争がなかったら、と考えることは」。そう尋ねると「自分の人生を振り返って後悔をするような性格じゃないから」と笑う御崎さん。「でも」と続けて「仕事や家族のことに手いっぱいで、若いときに恋ができなかった。それだけは心残りですね」。そう言って遠くを見つめた。
 

戦後70年 語り継ぐ戦争の記憶

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