装着するだけで正しいピッチングフォームが身に付く―。野球少年待望の器具を、今泉在住の清水直道さん(78)がこのほど開発した。長く少年野球の指導に携わってきた清水さんが「無理な投げ込みでケガをして野球を辞めていく子どもがいる」ことに胸を痛めたことが製作のきっかけ。40年以上にわたる試行錯誤が結実した。
「投球ゲージ」と名付けられたこの器具。ベルトで身体に固定してシャドーピッチングを繰り返せば、取り付けたゴムの力で「しっかり腕を伸ばして肘を頭の上にあげ、円運動で振り下ろす」正しいフォームが自然と身に付くという。
開発した清水さんは、神奈川県少年野球連盟学童部の委員を務めるなど、50年以上にわたって少年野球チームの指導に携わってきた。
清水さんが器具の製作に取り掛かったのは40年以上も前。「無理な投げ込みで肘を壊し、野球を辞める子どもが多い」ことに危機感を覚えたことがきっかけだった。
清水さんは当時、金型加工の会社を経営しており、仕事を終えた後に技術とアイデアを活かし試作を繰り返した。そして1999年、ようやく開発に成功する。アルミ製パイプを肩に固定、スプリングで腕を持ち上げるその器具は「投球マジックリング」と命名された。
販売を始めると、マンガ「巨人の星」で主人公が身に付ける「大リーグ養成ギプスの平成版」として話題を呼び、テレビや雑誌の取材が殺到。日本全国はもちろん海外からも注文が入り、製作した120個があっという間に売れた。
しかし手作りで量産が難しかったことや、清水さん自身の病気もあり販売は中止。以後、お蔵入りとなっていた。
小型・軽量化図る
「元気なうちにこれまでのアイデアを整理しておきたかった」という清水さんが、再び投球フォーム矯正器具の開発に着手したのは昨年末。「マジックリング」と基本的な構造は変わらないが、以前はアルミリングや金属製のスプリングだった部分は、ベルト素材やゴムなどに変更し小型・軽量化を図った。
これは子どもたちが使いやすくするのはもちろん、もう一つ狙いがあるという。「扱いやすい素材と簡単な構造にすれば、障害を持つ人が働く作業所でも作ることができる。子どもの育成と福祉の両方に貢献できたら」と清水さん。作業所の職員や福祉関係者にもアドバイスを仰ぎながら、開発を進めた。
こうして完成した「投球ゲージ」。当面は注文を受けての生産で、価格は2千円ほどを予定している。
衰えぬ野球への情熱
清水さんは東京・深川に生まれ、7歳の時に疎開した長野県で育った。中学卒業と同時に栃木県の町工場に就職。金属・プラスチックの加工の技術を磨いた。その後、都内や川崎の工場に転職。足立区の工場に勤めた際、野球部に所属したことが、野球との出会いとなった。
26歳で独立し、鎌倉に工場を構えると、競技経験を買われ、地元の少年野球チームのコーチに就任。以来、野球の普及と選手の育成に力を注いできた。
20年ほど前には「年齢や性別のハンデなく、安全に競技を楽しめるように」と専用の機械がボールを打ち出す「トスベースボール」を考案し、特許も取得。競技団体を作って全国に普及させてきた。
「打って塁に出るということは生きる意欲を育む。一方で時には自分が犠牲になってチームメートを活かす場面もある。まさに人生そのもの。子どもたちには野球を通じて様々な経験をしてほしい」と語る清水さん。野球への情熱は衰えることを知らない。
「投球ゲージ」の問い合わせは【電話】0467・45・2546清水さんへ。
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