鎌倉を愛し、鎌倉で働く人たちの「ワークスタイル」を紹介するこのコーナー。今回登場するのは菓子研究家のいがらしろみさん(44)。いがらしさんは2004年、扇ガ谷にコンフィチュール専門店を開店し、その後のブームの火付け役に。今春にはイギリスのコンテストで金賞を受賞するなど、丁寧な作業から生み出される味は、高い評価を受けている。
若宮大路沿いに店舗を構える「ロミ・ユニ コンフィチュール」。甘い香りに誘われて店内に入ると、ガラス瓶につめられた色とりどりのコンフィチュール(ジャム)が並ぶ。同店を経営、商品を監修するのが、いがらしさんだ。
出身は東京都。「かぎっ子」だったといういがらしさんは9歳の時、母親から子ども向けの料理本をプレゼントされる。特に好きだったのが、巻末にあったお菓子のページ。「休みの日にケーキを焼いて友達に振る舞ったこともありました。作ることも楽しく、食べたらみんなが笑顔になる。夢中になりました」と笑う。
高校生になると菓子教室に通い、短大時代は老舗洋菓子店で販売のアルバイト。「好みを覚えて商品をすすめたり、特徴が分かるようにメモを作って配ったり、お客様とお菓子の話をすることが何より楽しかった」と振り返る。
卒業後はアルバイト先に就職し製造部門に入ったが「製造はいかに早く、正確に商品を作るかが大事。自分の居場所はここではないと感じました」。1年で退職し、フランスに向かった。
語学学校に通いながら本場の味を食べ歩く日々。この時の経験から「私はお菓子作りだけでなく、その楽しさを人に伝えることが好きなのだ、ということに改めて気づきました」。
帰国後はフランスを本拠とする料理学校のスタッフを経て、菓子研究家としての活動をスタート。イベントの開催や料理本の出版などを続けてきた。
扇ガ谷に開店
ある時、雑貨店を営む知人から「ドイツ製のビンに入れるものを作ってほしい」というリクエストがあった。頭に浮かんだのは、フランス・アルザスで食べた素朴なコンフィチュール。独自の商品を作ったところたちまち評判となり、その後もイベントなどで販売するたびに飛ぶように売れた。「とにかくお客様の反応がうれしくて、自然とお店を作りたいと考えるようになりました」。
開店の場所に選んだのは鎌倉。2000年に都内から移り住んでおり「うぐいすの鳴き声で目を覚ますような自然、街自体がコンパクトで人と人の繋がりも深い。大好きな鎌倉で自分の味を届けたかった」という。
もともと酒屋だった物件と偶然出会ったこともあり、04年1月、扇ガ谷に「ロミ・ユニ コンフィチュール」をオープンさせた。
とはいえ、当初は全くお客が来なかったという。「開店したのは観光客が一番少ない時期。そんなことも分からずにお店を作ってしまったんですね」と笑う。
まだ珍しかったコンフィチュールの専門店は、雑誌などで徐々に紹介されるように。すると素材にこだわり、手作りでフルーツの風味を引き出した自然な味わいが人気となり、その後の「コンフィチュールブーム」をけん引する存在となった。
昨年9月には若宮大路に移転。現在は都内にも店舗を構え、焼き菓子などにも力を入れる。
英国で金賞受賞
今年3月にはうれしい知らせがあった。イギリスで開催された「国際マーマレードアワード2016」で、同店の「グレープフルーツのマーマレード」が金賞を受賞したのだ。
「エントリーしたのはコンテスト用に作ったものではありません。普段提供している商品の品質が認められたことがうれしい」と笑顔を見せるいがらしさん。「今後は鎌倉らしい、鎌倉だからこそ生まれる、そんな商品を作っていきたい」と話している。
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