長く鎌倉に居を構え、鎌倉を詠んだ歌も多く残した歌人・吉野秀雄(1902〜67)を偲ぶ「艸心忌(そうしんき)」が7月1日、市内二階堂の瑞泉寺で行われた。
艸心忌は吉野が亡くなった翌年に始まり、以降命日に近い7月の第1土曜日に、墓や歌碑が設置されるなどゆかりの深い瑞泉寺で開催されている。
節目の50回となった今回は、同寺の大下一真住職による読経や親族による焼香の後、歌人で愛知淑徳大学学長の島田修三さんが「私の吉野秀雄体験」と題して講演を行った。
島田さんは、父を亡くした20歳頃、吉野が最初の妻・はつ子を亡くした際に詠んだ「病む妻の足頸にぎり昼寝する末の子を見れば死なしめがたし」を偶然知って激しい衝撃を受けたエピソードを紹介。「吉野の心が直接飛び込んで自分の気持ちと重なるようで、その思いがずっと心に残っている。自分にとって吉野との出会いはまさに体験と呼べるものだった」と話した。
そして吉野が自らの創作について語った「わたしの歌風は、生活に密着して、経験的事実をありのままに率直に感受するといふたちで、従つて表現としては一切の無駄を排除し、ひたすら簡潔に、直線的に、唯一息に言ひ下さうとする」などを引用しながら、「吉野の歌には傾倒していた万葉の韻律が織り込まれており、古代からの声が聞こえるような荘厳な格調がある」と評した。
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