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茅ヶ崎・寒川 人物風土記

公開日:2019.03.15

神奈川県から市内で4人目の指導漁業士として認定された
北村 征一さん
柳島海岸在住 54歳

ロマン繋ぐ海の男

 ○…「やっぱりやる気がある人が一番だね」。市内でしらす船曳き漁業を営み、加工から販売、海鮮料理店「あさまる」の経営も手掛ける。市漁業協同組合の理事を務めながら指導漁業士として後進の指導にあたり、「当たれば実入りが大きいロマンある漁業。若い世代にも魅力を知ってほしい」。

 ○…柳島海岸で生まれ育った。普段はしらす漁を営む父が、祭日に客を乗せたはまぐり漁の船を出し、浜辺からそのにぎわいを眺めていたのが原風景。中・高の夏休みは毎朝3時半に起きて漁を手伝い、「カマスの青臭さが苦手で、船酔いがひどかった」と懐かしむ。高校卒業後、システムエンジニアとして就職。仕事の合間にも家業を手伝い、父の引退を機に30歳で漁師の道へ。初めは要領が掴めなかったが、プログラミングで培った建設的な思考で、潮の流れや水深、網の引き方などのデータを収集。「異業種からの参入でも活かせることがある」と実感した。

 ○…20年以上荒波で経験を重ね、現在では地引網漁などからしらす漁に転向した同業者に指導もすることも。昨年7月には漁業に関心を持った20代半ばの女性2人を船に乗せ、水揚げから、陸でしらすを茹でるまでを体験させた。「見守る人手が足りず、危険を伴う作業はさせられなかった」と惜しみながらも、「ハードな世界だが狙った通りに魚が獲れるとやりがいを感じる。漁業に関心を持つ人が増えてくれたら」。

 ○…3月半ばまでの禁漁期も自宅で漁の研究に余念がない。「しらすを獲ったときに紛れる小さなエビなどがかからない網を考案しているんだ」と目を輝かせる。大学2年の息子は、そんな父の背中を見て同じ道を選んだ。「漁師に限らずやりたいことをやればいい」と言いつつも照れ臭そうな笑顔を見せた。

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