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茅ヶ崎・寒川 社会

公開日:2025.09.05

稲作を通じ「農」に理解を
寒川町で「田んぼプロジェクト」

  • (上)田んぼプロジェクトのメンバーら(下)草刈りをする篠田さんと参加者

 地元住民によるグループが、寒川町倉見の田んぼで無施肥無農薬栽培の米作りに取り組んでいる。グループの篠田琢さんは「農家さん任せではなく、消費者も農業にかかわることで農のさまざまな課題にアプローチできるのでは」と話す。

 この取り組みは、茅ヶ崎市共恵のクルーズタウンコーヒーロースターズの篠田さんが茅ヶ崎・藤沢エリアで有機農業を行うイマハ菜園の今林久則さんからの呼び掛けで、4年前に無施肥無農薬栽培での米作りを始めることになったのが契機。篠田さんはこの取り組みを「田んぼプロジェクト」と題し、一切の肥料・農薬を使わない、自然農法での米作りを通じて、田んぼの維持管理、コメ文化の継承などを目的に一緒に取り組んでくれる仲間をSNSで募ったところ、32世帯の応募があった。「当時はコロナ禍で、皆さん農業や食育の大切さを感じていた」と話す。

 田んぼは藤沢市の有機農家・相原農場が周辺の離農者から「耕作放棄はしたくない、田んぼとして維持してほしい」との思いで託された農地を安価で借り受けているもの。現在は相原農場の民間グループと一緒になり、10代から70代のおよそ50人の大所帯で活動。全体作業に加え、各自の都合で田んぼに出向き、作業するスタイルを取っているという。

 昨年はさらに別の農地を引き受けたが、稲の大敵である雑草のノビエが繁茂。稲と形が似ていて見分けが付きにくく駆除に苦労したというが、今年は昨年の経験を生かして大量に駆除できたことから作業も順調に進んでいる。篠田さんは米作りの魅力について、「自分たちで育てて収穫して、脱穀し、籾ずりしたお米は本当においしい。その体験はぜひ皆さんにも味わってほしい」と目を輝かせる。

農業を「自分事」に

 一方で米作りを始めた当時を振り返り、「生産者に丸投げでなく、消費者側もコメ文化を維持する必要があると感じていた。食料自給率、食の安全保障の問題も山積みで自分たちでも動くべきだと思った」と篠田さん。併せて「田んぼは流域治水(河川氾濫時の緩衝地帯など)や生物多様性の役割、美しい田園風景などお金に換算できない機能がたくさん」と指摘。今後は有志の民間グループが米作りで農業を補完する、「田んぼプロジェクト」のような動きがモデルケースとなって周囲に広がればと期待する。

 昨年は玄米375kgを収穫。今年も12月に収穫祭を開いて喜びを分かち合うつもりだ。篠田さんは「去年以上の収穫になれば。そうして皆で笑顔になれば、米作りはやめられなくなり、もっと農業への理解も深まるのでは」と願いを込める。

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