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大磯・二宮・中井 人物風土記

公開日:2022.11.18

国指定史跡の鳥取城跡擬宝珠橋の擬宝珠を制作をした
上島 国澄(かみじまくにすみ)さん
二宮町山西在住 78歳

澄み渡る人生の音

 ○...「日建連表彰」土木賞の特別賞を受賞した、鳥取城跡擬宝珠橋の復元工事で擬宝珠(ぎぼし)の製作を手がけた。伝統工法を生かした重厚感のある色付けの再現は高評価を受ける。「まさか自分が携われるなんて。大変名誉で、貴重なこと」と喜びを語る。

 ○...二宮町で生まれ育つ。転機は自身の基礎を作った書籍『生涯教育論』に出合ったことだった。「一生涯学び続けることの大切さと豊かさを説いた本。年齢に関わらず、学びたいことを学べる社会を作りたいと思った」。当時45歳。勤めていた県立工業高校を1年休職して最先端のシステム技術を学び、高校教師の傍ら、県下初の社会人向け技術講座を開いた。

 ○...自身のシステム技術を生かそうと鋳物制作を学んだことをきっかけに、50歳から小田原の伝統鋳物の歴史と技術について研究を重ねた。その経験から、人が癒しを感じる音色を追求した砂張(さはり)風鈴を制作する。この風鈴は、三越をはじめ大手百貨店で売り切れるほどの人気となり、「音を聞いて涙を流す人もいた」という。Eテレの番組『にっぽんの芸能』のテーマ曲で楽器としても使用された。さらに、県内の小中学校で風鈴作りの出張講座を20年ほど実施し、鋳物の魅力を伝えている。「社会や他人のために何ができるかを考える。私の人生は『利他』の精神で紡がれてきた」。辿る道を確かな布石にしてきたからこそある言葉だ。

 ○...「月はるる 軒端の紅葉 秋草の 園の砧(きぬた) 聲(こえ)も澄み居(お)り」。40年前に購入した掛軸の詩は「私の風鈴の音が響きわたっていくよう」で、偶然にも自身の人生を詠っているようだと話す。「生涯教育、利他、出会い。これらが私に種を撒かせ、花開く人生を作ってくれたと思います」

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