大磯・二宮・中井 人物風土記
公開日:2023.08.04
国重要無形文化財の保持者(人間国宝)に7月21日に認定された
藤塚 松星さん(本名:藤塚 洋史)
大磯町大磯在住 74歳
竹芸に現れる天文愛
○…国重要無形文化財「竹工芸」の保持者(人間国宝)として7月21日、国の文化審議会文化財分科会で追加認定された。生み出した技法「彩変化」は断面が三角形の竹ひごを使い、面ごとに異なる色を塗ることで見る角度によって色合いが変わるもの。花籃などの立体作品に動的な美しさを加える唯一無二の技法は、工芸の技術とアートが合わさった「竹芸」の表現の幅を広げた。「今後は多くの人に竹芸を知ってもらう機会を作りたい」と意気込む。
○…竹芸を始めたきっかけは「大好きな天体観測の時間を確保するため」と頭をかく。レコード会社や天体望遠鏡メーカー勤務を経て、夜型生活を叶えるため自営業の道を模索。商業施設で見かけた竹細工に惹かれ、教えてくれる場所を探し、紹介されたのが師匠の馬場松堂さんだ。「30歳までに一生の仕事に就きたい」という思いを抱き23歳で弟子入りした。
○…アトリエには自ら撮影した木星や彗星の写真が飾られている。角度によって見える色が変わる「彩変化」の特徴を生かし、月の満ち欠けを表現した盛籃『秋月湖映』や『天の河』『彗星』と名付けた花籃など、天文愛は作品にも。「宇宙の歴史に比べれば人生は一瞬。その中で美しさに出会えた喜びがある」
○…竹芸の技術は、師匠の仕事ぶりや作品を見て盗み、自分らしさを加えて磨いていった。「弟子入りしたとはいえ『教えてくれる』感じではなかった。先生はよく『彼には何も教えてない』と僕のことを話してくれて、それが僕の誇りだった。認めてくれたと感じた」。伝統技術を継承するには、新しい要素への寛容さと見守る姿勢が必要だと実感中。「おおらかな心で未来を担う若者たちの挑戦を応援したい」と目を細めた。
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