小田原・箱根・湯河原・真鶴 人物風土記
公開日:2012.09.15
田島歴史同志会の代表を務める
野地 芳男さん
市内田島在住 77歳
知る喜びがパワーの源
○…「まだまだ調べたい。知れば知るほどおもしろい」。生き生きと語る表情はまるで少年のようだ。結成13年目の田島歴史同志会。「田島」の伝統や文化、史跡を調査し伝えていく。「ふるさとにはふるさとの魅力がある。子どもたちにも地域に誇りを持ってほしい」。地元公民館での講演に加え、昨年からは親子で楽しめる「歴史散歩」のガイドも務める。「『こんなものがあったんだ!』ってびっくりしてくれる。それが嬉しい」と目尻を下げる。
○…大磯町出身、7人兄弟の5番目。結婚して妻の実家のある田島に入ったのは26歳の時だ。40年勤めた保険会社で業務コンサルタントを担当し全国の支店を飛び回った。定年後、転勤で留守にした18年の間、身内が世話になった地元に恩返しがしたかった。自分なりに役立てることは何か―「まずは知ること」と、身近な地域の歴史を調べ始めた。
○…もうひとつのきっかけは50歳の時。家の裏に禅僧「風外慧薫(ふうがいえくん)」が隠棲した洞窟があると親族から聞かされた。地元では有名な話とあって「そのくらい知っとけ」と笑われた。里のことも知らないのだ、という恥ずかしさも後押しになった。風外禅師の研究を進めて17年。今では「風外さん」と親しみを込めて呼ぶ。「うらぶれた怖いイメージが強いが自然と子どもを大事にする、心は優しい人」と親しい友人のように話す。
○…歴史を動かした人々よりも、日のあたらない「市井の人」に興味がある。郷土の歴史も同じだという。その時を生きた民衆の視点や感覚を知りたい。自室には研究してきた長年の資料や知識を書きつけたノートが溜まっている。「80までにこれをまとめて本を出したい」と力強い言葉。「これが生きがいだし、務めだと思っている」。連綿と続くつながりの一端として、自分の力でできる限り次の世代へつなげていくこと。「風外さんから教わったんですよ」とパワーみなぎる笑顔を見せた。
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