県内最年少のタクシードライバー 佐藤 涼さん 市内本町在住 22歳
強く、そして逞しく
○…ピンクのポーチに、花柄のファイル。運転席の脇に女の子らしいアイテムを備え、小田原や箱根を飛び回っている。
○…市内中町の富士箱根交通(株)に転職し、タクシーの運転手になったのは半年前。普通免許取得から3年間は乗務員に必要な二種免許をとれないため、今年3月、ようやく取得条件を満たした。神奈川県タクシー協会に登録されているドライバーの中で、男女通じて最年少(9月1日時点)。「車の運転が好きで、仕事にできればと思っていた。今は楽しくて仕方ない」。前職はバスガイド。老若男女を相手に軽快なトークを披露してきた経験も活きている。「タクシーのお客様もさまざまだけど、いろんな話ができる」と前向きだ。
○…彼女の人生は、東日本大震災によって大きく変わった。2年半前に甚大な被害を受けた宮城県南三陸町出身。高校卒業後、都会への憧れから関東へ。松田町のバス会社へ就職して1年後の2011年春、仕事を辞めて故郷に戻ろうと決心していた。両親への報告を兼ね、3月12日に実家へ帰る予定だった。しかし、前日の地震で帰省どころか家族への電話も不通に。4日後、家族や知人の無事は確認できたが「無職で地元に戻っても迷惑をかける」と思いとどまった。震災は、それまで弱気になっていた彼女を奮い立たせたのだ。タクシー乗務員となり、泥酔した利用者が行先を教えてくれず、涙ながらに先輩に助けを求めたこともあったが、下を向く気はない。
○…趣味もドライブ。休日に友人と出かける際の運転は「もちろん自分」なのだとか。カラオケで盛り上がり、夜勤後は24時間眠り続けることも。転職を機に小田原へ引っ越し、「お城やお堀端通りは風情があって好き。この街でお客様に安心して乗ってもらえるような運転手になりたい」と語る。実家の漁業は今年6月に本格的に再開した。前に進む家族へ伝えたいことがある。「私、頑張ってるよ」。
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