第30回全国削ろう会小田原大会の実行委員長を務める 芹澤 毅さん 市内久野在住 43歳
貫く職人の一本”木”
○…ここ最近のトレードマークは、茄子紺に「削ろう会」の文字が白く抜かれた半纏姿。全国各地から集まる大工たちが、腕一本で鉋削りの技を競う大会は、いよいよ本日、本番を迎える。日本が誇る木工技術の伝承もまた、大会の大切な要素。山を守り育ててきた人、形を変えて木を生まれ変わらせる人…林業関係者だけでなく、木を愛する「オール小田原」を裏方として束ね、大会の舵を取る。
〇…人生の師匠が2人いる。一人は、技術面で基礎を教わった宮大工の父。18歳で弟子入りし、見よう見まねで技術を習得してきた。失敗して怒られながら体得したことが、今の自分の根っこだ。もう一人は、技術を生かす方法を教えてくれた故・安井清氏。気に障るとすぐに顔に出る自分に師匠は説いた。「怒ったら負けや」。だから「鏡の前で笑う練習をしてね」。笑顔ひとつ、心ひとつで仕事は潤滑にまわると教えてくれた師匠は、4年前に旅立った。さまざまな分野の職人とのつながりを大切にした師匠を見倣い、貫く穏やかな物腰に今では信望が厚い。
〇…文化財の修復や古建築の勉強など、棟梁の仕事に活かせる場には積極的に赴く、努力の人だ。人に恵まれ、一途に高みにあがるために精進してきた人生を「苦しいことばかりだよ」と飾らず本音で語る。出来ないこと、知らないことを探求し続ける”辛さ”を前に、「坂道を上り続けている状態。楽をして下りはじめたら、職人としては終わりだから」。ひとつのしごとを終えた時に施主からかけられる、「いい仕事をしてくれてありがとう」の一言が、ふっと気持ちが楽になる瞬間だ。
〇…本業の傍ら、行政と協力し、技術を伝えるべく若手の育成に力を入れる。歴史的な風致が数多く残る小田原には、職人が必要な理由がある。削ろう会の大会会場では弟子達が作った茶室で、お茶をたてる予定。糊のきいた半纏に袖を通し、いざ木の香りの中へ―。
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