小田原・箱根・湯河原・真鶴 人物風土記
公開日:2015.11.28
開業50周年を迎える小田原総合食品卸売市場で出店者組合の組合長を務める
阿久津 馨さん
浜町在住 75歳
台所を支える市場愛
○…食料品、雑貨などを販売し、飲食店や家庭の主婦を支えてきた小田原総合食品卸売市場。開業50年の節目を前に「感謝の気持ちと今一度、市場の良さを知ってもらいたい」と、大感謝祭を企画した。「これからの時期は年間を通じ市場が一番賑わう。普段利用したことがない方でも、年末年始の準備に足を運んでもらいたい。例年以上に盛り上がれば」と、期待を寄せる。
○…「年末ともなれば通路が見えなくなるほど人で溢れ、『商品が足りなくなるのでは』と心配だった」と、かつての賑わいを思い出す。全盛期には60店を超えた出店数も現在は25店ほどにまで減少。シャッターが閉まったままの店舗もちらほら。店主の高齢化や後継者不在、大型商業施設の台頭で来客数も減っているのが現状だ。とはいえ、「この市場で商売したら他ではできない。同業種が軒を連ね、限られたスペースでのごった煮感、何より働くスタッフの人柄も素晴らしい」と、市場への愛着は人一倍。だからこそ、『土曜の市場はおもしろい』と銘打った特売企画を毎週行うなど、常に集客・存続のため、出店者と共に前を見続ける。
○…精肉を扱う小田原畜産を築いた社長の顔を持つ。戦争を経験し、食のありがたみを噛みしめながら育ったからこそ「食にまつわる仕事に就きたい」と、15歳でこの世界に飛び込んだ。食肉技術者として60年。「娘が帰ってくるから」「息子の試合があるから”カツ”」「受験で合格した」など、この道一筋の大ベテランは、客の楽しげな会話に耳を傾け、祝い事や特別な日の食卓に笑顔も提供してきた。
○…年齢を感じさせないもち肌が気になり、その美白は上等なお肉のせいかと尋ねた。すると、「もちろん肉も好きだよ」と答えつつ、茶目っ気たっぷりにゴルフスイングのジェスチャーを見せた。「仕事のうち」と、週に1度はコースに出るほどのゴルフ好き。その底知れぬパワーで小田原の台所を支え続ける。
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