1月28日の西さがみ文化フォーラムで講演する、日本蟻類研究会会長の 近藤 正樹さん 城山在住 84歳
アリがとうの巣に生きる
○…誰もが一度は見つけ、触れた事があるであろう身近な生物・蟻。小さな命に魅せられること70年。研究を続け、ついにはディズニー映画のパンフレット監修まで手掛けるようになった。旧友の依頼を受け1月28日には地元小田原で「アリとあらゆる蟻の話」を語る、まさに蟻研究の権威だ。
○…商人の気質がなかったという父が東京での事業に失敗し、一家で小田原に戻ってきたのは小学3年生の頃。「食うにも困るから」と学校が終わると土をいじり、畑仕事に精を出した。戦後の混乱期、廃材を用いて様々な発明品を作り出すなど探究心と閃きに満ちた少年は「突き詰めて”わかった”となる瞬間」が好きだった。小田原高校で生物部に入ると、お金をかけず採集でき、徹底的に調べられる蟻にロックオン。さっそくクロオオアリを捕まえて飼い始めた。だが、すぐに死んでしまう。後に乾燥した飼育環境が原因だったと知るが、この時頭の中は疑問符に溢れていた。「隣の学校に詳しい先生がいるらしい」。噂を頼りに尋ね、そこで後の人生を決定づける先導者と出会う。観察用装置の提供にはじまり、進学・就職への助言まで。まるで巣が広がるように幾多の偶然と出会いが重なり「ラッキーな事に好きなことを続けてこられた」。
○…背中を追う様に研究者・教職者として勤め上げた今、膨大な標本などを収蔵する為自宅を改修。亡き弟が遺した資料と意志を継ぎ、もう一種を追加した「近藤蟻蜘蛛研究所」と名付けた。甘い罠を仕掛けに世界中を歩いた採集作業はさすがに近場に留まっているが、論文をまとめる作業は続く。「興味ある人がいたら研究所も公開しますよ」と、自身がもらった高揚感を後進にも届けたい。空で見守る恩師にアリがとうを伝えるためにも。
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