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公開日:2019.08.10
灯し続ける郷土文化の火
田島地区で受け継ぐ大山灯篭
山岳信仰として、江戸時代に庶民の間で流行した伊勢原の大山詣り。「雨降山」の別名をもつことから雨乞いの神として農民に親しまれ、参詣仲間による「大山講」が関東南部を中心に各地に結成された。小田原市田島地区では、その風習が今もなお受け継がれている。
田島地区で大山講が結成されているのは4カ所。堂の前・境・河原・尾崎の小字名により、200年以上にわたって代々活動を続けてきた。
かつて、大山に登山が許されていたのは年間で7月27日から8月17日のみ。この開山期にあわせ、各講の代表者が大山参詣に向かった。残った者は地域に木製の大山灯篭を立て、ろうそくに火を灯して雨を乞い、「講中」と呼ばれる仲間の無事を祈った。現在は参詣することこそなくなったが、開山期になると日暮れにあわせて当番制で灯篭に火を灯し続けている。
近所の仲間内で組織される講は、地域交流の機会でもある。かつては夏山期間になると皆で集まって酒を飲み、それ以外の時でも米や農機具の貸し借りも行うなど互いに助け合う存在だった。
だが、近年は少子高齢化によりメンバーの高齢化が進み、後継者も不在。その数は年々減少傾向をたどる。若い世代を中心に、地元でも講の存在を知る者は少なくなった。
地域の絆のためにも
こうした現状を憂い、保存に立ち上がる人もいる。堂の前で、リーダーにあたる「講元」を務める野地芳男さん(84)=写真下=だ。結婚を機に妻の実家がある小田原に移り住んだが、現役時代は仕事で全国を転々。定年を機に家族が世話になった地元へ恩返しをしようと、まずは郷土史を学び始めた。
調べるほどに気付く奥深さ。大山灯篭を立てる地域は減っており、「土地にずっと根付いてきたもの。郷土文化の火を消してはならない」と実感するようになった。信条は現場に足を運び、土の匂いをかぎ、手でふれること。後世に残すべく、調べ上げた講の歴史や言われをまとめた資料づくりに励んでいる。
近所に住む野地博さん(62)は、父の後を継いで6年前から講中として活動に参加。「高齢化が進む時代、ご近所同士の絆を深めることは介護の面でも大切」とし、現代ならではの講の存在意義を話していた。
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