小田原市が所有する日本家屋「豊島邸」(栄町)の利活用事業について、優先交渉権者に決まっていた小田急電鉄(株)(本社/東京都新宿区)が辞退することが分かった。8月7日の市議会厚生文教常任委員会で、市が報告した。
豊島邸は1941年頃の建築。瓦葺屋根付き門と黒板塀、書院風と数寄屋風の意匠を組み合わせた木造平屋建ての主屋がある歴史的建造物だ。今年7月には、国登録有形文化財に登録された(主屋、門および塀)。
所有者から2015年に寄贈を受けた小田原市は、同邸の維持・保全と地域活性化を目的に指名型プロポーザルで事業者を募り、今年1月に小田急電鉄が利活用事業者に決定していた。
同社が提示した利活用案は、インバウンドの外国人観光客を主に想定した1棟貸宿泊施設。1月に市と基本協定を交わしたが、同月下旬に開始するはずだったリノベーション工事は新型コロナの影響で着手せず、4月に予定していた市との定期建物賃貸借契約も保留されていた。
7月29日付で市に提出された辞退届で同社は判断理由について、新型コロナウイルスの影響で訪日外国人旅行者の需要が減少し、その後の見通しも立たず事業性の確保が難しいと説明。当社の取材に対し「歴史的価値の高い本物件での事業展開を通して、小田原エリアの活性化に寄与できると考えていたので、非常に残念に考えております」と回答した。
市では辞退を受けて、プロポーザルの次順位交渉権者である(一社)古民家再生協会と交渉する方針だが、同協会の事業提案も同じく外国人観光客を想定した宿泊施設となっている。同協会湘南の福田徹事務局長は、「インバウンドが戻るのは2〜3年先だと思う。協会には国内の観光誘客のノウハウもあるが現状では何とも言えない」と慎重な姿勢を見せている。
市文化政策課では、「(小田急電鉄の)辞退は残念だが、引き続き豊島邸の利活用を進めていきたい」と話している。
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