箱根寄人(よせびと)プロジェクトのリーダーを務める 原 健一郎さん 箱根町在住 48歳
懐の広さ、未来につなぐ
○…箱根旧街道の旅館や飲食店など6社を中心に展開している「箱根寄人プロジェクト」。寄木細工のように「人の心を寄せていきたい」と2年前から準備を進めてきた。30〜70代のメンバーが集い、第1弾として昨年、6カ所に給水スポットを設置。マイボトルを持って歩く人に「箱根の水」を提供しており、行政や観光協会も応援するプロジェクトに発展した。コロナ禍で利用する観光客はまだ少ないが、「身近に体験できるSDGsとして、地域で育ててもらえる活動にできたら」と目を輝かせる。
○…祖父母が経営する湯本茶屋の旅館「雉子(きじ)亭 豊栄荘」を継ぐ決意をしたのは28歳の時。横浜国立大学で建築を学び、設計の仕事や高齢者福祉に関わるなかで、転機となったのは図書館で手にした『バリアフリーの旅を創る』という一冊だった。「旅は最高のリハビリ。旅館の仕事は旅人に希望を提供できるのではないか」。幼い頃に海外生活で感じた多様性や大自然との出合いとも合致し、人生の目標がパッと開けた瞬間だった。
○…都内から箱根に生活の場も移し、33歳で社長に就任。「箱根のことをもっと知りたい」と、地域の美化パトロールの活動に参加している。人とのつながりを通して強く感じたのは、箱根八里の旧街道に根付く「おもてなしの心」。旅人を温かく迎えてきた宿場文化こそが、プロジェクトの原動力になったという。
○…休日は妻と2人の娘と一緒に、美術館やカフェ、温泉に足を運ぶなど、家族で箱根を楽しんでいる。公私ともに大切にしている精神は「もったいない」を生かすこと。旅館の敷地にバイオマスボイラーを設置するなど、持続可能性にも取り組む。「豊かな自然を守り、懐の深い箱根を未来へつないでいきたい」
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