念願の単独出場2校「一緒にひとつ勝とう」
たった1人の野球部員。キャッチボールの相手は監督の高橋直也だった。
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2015年夏、合同チームで掴んだ歓喜の1勝。神奈川高校野球の聖地、保土ヶ谷球場での試合はテレビ中継された。3日後の2回戦で敗退すると大井の野球部には1年生の石原拓真(渋沢)だけが残った。1人で部活を続けた石原は春までの8カ月間を「監督さんから教わることができて楽しかった」と振り返る。
監督の高橋は愛知県内の公立高校で高校野球を経験し、日体大から指導者をめざし2年前に激戦区の神奈川へやって来た。「野球部を後輩へ繋いだのは石原。あの8カ月間は私にも得難い経験でした」と回想する。
昨年の春、4人の新入生を迎えたが秋まで残ったのは山口龍輝(秦野東)ただ1人だった。その山口は複雑な思いでこの夏を迎えた。
「正直言って寂しい。大会が始まらないでほしい」。それでも「石原さんを勝たせたい」と前を向く。
春に入部した1年の北村優翔(酒匂)は「1年生7人全員、この夏は石原さんのために戦う」と誓う。
高橋の地域まわりの甲斐もあり、この春は7人の1年生が入部し部員が10人に増え、一転して3年ぶりの単独出場が決まった。頑張りが報われた石原にとってこの夏は最初で最後の「大井」としての公式戦になる。12日、相模原球場での1回戦、相模原総合との一戦で15年ぶりの単独勝利をめざす。
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「拓真にはヒットを打って1勝してもらいたい。自分たちは3人いたけど拓真は1人だった」―。吉田島の本名朝陽(ほんなあさひ)(秦野南)は1年秋と2年春、3年春に合同チームを組んだ大井の石原に「一緒にひとつ勝とう」とエールを送る。
本名の相棒は鈴木鉄馬(けんた)(箱根)。帰宅は夜9時半過ぎだが休むことなく本名とともに3年間、汗を流した。2人の頑張りに同級生の真保祐也(松田)と川崎伊玖絃(酒匂)が応え、2年生5人と1年生2人が加わり、秋と春にかなわなかった単独出場にこぎつけた。
本名と鈴木の2人を3年間、支えてきたマネージャーの末次菜々子(秦野南)は「大工さんになりたくて専門科のある吉田島に入った。漫画の『メジャー』を読んで高校野球にあこがれ野球部に入りました。頑張ってきた2人に悔いが残らないようベンチから精いっぱい声を出す」と話す。
2年生のマネージャー満田幸恵(湘光)は「3年生にとって大事な大会。悔いのない夏にしたい」とスタンドからエールを送る。
夏の初戦は13日。小田原球場に保土ヶ谷を迎え6年ぶりの勝利をねらう。
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