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鶴見区 人物風土記

公開日:2013.02.14

川端康成の未発表原稿を確認した
片山 倫太郎さん
鶴見大学文学部教授 50歳

自らを文豪に重ねて

 ○…鶴見大学で日本近代文学を研究。中でも自身が未発表の原稿を確認した川端康成は、学生時代の卒業論文から研究を続けている。「『伊豆の踊子』のラストで男の子が泣く場面に心動かされた。川端がどうやって小説を書けるようになったのかに興味を持つようになった」。講義では、作品を読むだけでなく、その暮らしぶりも感じてほしいと、生徒と鎌倉などの文豪ゆかりの地を訪ねる「文学散歩」を実施している。「厳しすぎず、楽しく」をモットーに教鞭を執る。

 ○…出身は京都。両親が医師になることを望んでいたこともあり、中学・高校は全寮制の男子校で勉強の毎日だったという。親の願いを汲み、理系で学んでいたが、途中で文系に。「医者は人を切ったり、命を左右するので怖かった」。文学に目覚めたのは大学生。学校が面白いと思えなかった当時を、「グレていた」と表現する。「近代文学の作家の中にも同じような経験をしている人は多く、彼らと自分自身が重なった」と振り返る。

 ○…家庭では、妻と、高校生と小学生の娘を持つ。仕事の合間には音楽を聴く。特に好きなのは70年代のロック。「デビッド・ボウイやエアロ・スミスとか。最近は忙しくてあまりゆっくり聴けていないけれど」。人と話すことは少し苦手。「授業でも生徒と目を合わせるのが恥ずかしい。近代文学の作家でもシャイで社交的でない人は多いな」

 ○…今後も作家の生原稿や手紙など一次資料からの研究を積極的に行っていきたいという。「文字を消したり書き直した跡から、作家がどのように考えて書いたのかを知ることができる」。死や性など、社会の中でふたをされがちなこともさらけだせるのが文学であり、それが魅力だと語る。「近代文学の作家は、アウトローのところから社会や人間の本質を追求している人だと思う」。自らを文学の道へ導いた作家たちへの興味はこれからも尽きない。

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