鎌倉を愛し、鎌倉で仕事に就く人々の「ワークスタイル」にスポットを当てるこのコーナー。今回は弁理士の渡部仁さん(43)を紹介する。渡部さんは、商標やロゴマークの登録といった業務にとどまらず、これらを活かした企業のブランド構築を支援するユニークな弁理士として注目を集める。「知財で鎌倉を元気にしたい」というその活動の原点とは―。
普段の生活ではちょっとなじみの薄い「弁理士」。特許や商標、実用新案などの登録を担う専門家だ。
横浜市出身の渡部さんは大学卒業後、都内の特許事務所で10年以上にわたって経験を積んだ。「親戚の家があって、幼い頃からよく通っていた」という鎌倉に住み始めたのは、結婚後の2003年。「より地域に根差した仕事がしたい」と09年、「将星国際特許事務所」を市内扇ガ谷に開いた。現在は妻の恵美子さん、営業を担当する瀬戸宏隆さんと3人で事務所を営む。
ブランド構築も支援
「お客さんもコネもない、ゼロからのスタート。とにかく足を使って地域を歩き回りました」と開業当時を振り返る渡部さん。こうした努力は徐々に実を結び仕事を増やしていった。
依頼や相談の多くは、地元の中小企業による商標登録に関するもの。ただ「何のために登録が必要か、正しい認識が広がっていないと感じる場面があった」という。
「商標はブランドを支える土台。築いてきた評判を含めて商品を守り、長く使うために必要なものだと、お客様には必ずお伝えしてきました」と渡部さん。その一方で「せっかくの商標を事業に活かさなくては意味がない」と考えるようになり、知財を活かしたブランド構築そのものを支援するようになっていた。
そうした企業の一つが、井上蒲鉾店(牧田知江子社長)。現在でも職人が一つ一つ手加工で仕上げるこだわりを伝えるため、看板商品である「梅花はんぺんⓇ」などを商標登録し、SNS等で活用する。
また鎌倉青果(株)(高橋伸行社長)は「鎌倉いちばブランドⓇ」を商標登録した。同社が扱うのは、鎌倉近郊で採れた野菜。生産者とともに品質管理に取り組んできたが、渡部さんはそのこだわりが十分伝わっていない、と感じていた。
そこで登録とともにロゴマークの作成を提案。一般公募とすることで、消費者にも参加意識を促したうえ、完成したロゴは店頭ののぼり旗や野菜を束ねるテープに使用するなど、多くの目に触れるようにした。これらの取り組みは「フード・アクション・ニッポンアワード2014」を受賞するなど評価を受け、その後、大口の取引にもつながったという。
渡部さんは「鎌倉そのものがブランドとして大きな力を持っている。そこでナンバーワンになることで、全国に出ることができる」と狙いを話す。
サウンドロゴ全国3番で出願
現在は市内2千社に配布するニュースレターや、地元FM局でのラジオ放送を通じて企業のバックアップを行う。また渡部さん自身が理工学部出身という経歴を活かし、事業内容に成長や変化があっても、商標が守れる「商標レコメンドシステム」を自ら開発するなど、ブランド構築と活用の研究に余念がない。
昨年4月1日に「音商標」(サウンドロゴ)の登録が可能となった際には「自分たちが知らなければ、お客様におすすめできない」とオリジナルのサウンドロゴを制作。「決して敷居は高くないことをアピールしたかった」と子どもとともにメロディを考えた。登録システムがオープンする午前3時ぴったりにエントリー。「本当は日本で一番になりたかった」と笑うが、大手製薬会社などに続いて全国3番目での出願を果たした。
渡部さんは「こうしたやり方は手間もかかるし、目先のことだけを考えたら損。でも私たちの目標は地域で長く仕事をすること。お客さんの立場でいいと思ったことをやろうと決めています。鎌倉というブランドをみんなで育て、まちを元気にできたら」と話している。
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