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平塚・大磯・二宮・中井 人物風土記

公開日:2014.05.08

将棋駒を制作している
三浦 日出男さん
山下在住 78歳

駒作りは玄人はだし

 ○…将棋の駒がこんなに美しいとは。木目がストライプに出る柾目(まさめ)、それに赤みがかかった赤柾(あかまさ)、孔雀杢(くじゃくもく)に根杢(こんもく)。虎の縞模様のような虎斑(とらふ)は強い将棋を指せそうだ。「時間あるの」と気遣いながら、棚にズラリと並んだ小箱を次々取り出す。盤に出した駒が角度によって色の濃淡や照りを変えた。「一つとして同じ駒はない。まさに木の宝石」。なかでも1本の木を材料に全ての駒の模様が揃ったものは貴重だという。趣味で将棋駒を手作りしている。

 ○…駒作りを始めたのは将棋初段になった1977年。展示会に行ったところ、ピンキリの駒に「ならば自分で作ってみよう」と思い立ち、駒師金井静山を訪ねた。「木地を作って来れば教える」。「素人には無理。そういえば諦めると考えたのでしょう」。体のいい断りだったが、手先の器用さも手伝って条件を満たし、教えを受けた。材料は最上級品の駒に用いる御蔵島のツゲ。現地から原木を取り寄せる。五角形に木地をこしらえ、彫った文字に漆を塗り、瀬戸物で磨き上げて完成。手間の込んだ細かい作業を地道にこなす。師の形見という磨き道具を指し、「戦後に拾った便所の陶製ドアノブ」と快活に笑う。

 ○…日本将棋連盟平塚支部が毎年7月に開く、将棋大会の七夕名人戦で使用される駒の制作者。昨年の大会では子ども部門の優勝者と準優勝者に駒をプレゼントした。後日、その小学生と父親がお礼のあいさつに来たそうだ。大腸の手術を受けた直後で「生きて帰って来られた。子どもたちに喜んでもらえることを何かできればと思って」。同支部からの要請に今年も賞品として手作り駒を提供することを快諾した。

 ○…左党だったが「飲み慣れれば結構いけるね」と晩酌はノンアルコールビール。「飼い猫のゴロにゃんこみたいに落ち着いて過ごせるのが一番」。大病しても人生を1年丸儲けできたと欲を張らない。北海道出身らしい大らかさが溢れる。

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