「講義もエンターテインメント」
東海大学文学部で、アニメ作品を題材とした講義が学生のハートをつかんでいる。授業では文学的視点からアニメを考察、宿題もアニメ鑑賞という前代未聞の講義。指導するのは日本文学科の志水義夫教授だ。湘南キャンパスで開講している話題の講義「知のフロンティア〜魔法少女は生まれない〜」を取材した。
志水教授の専門は、古事記や日本書紀などの上代文学。敢えてアニメを題材にした理由の一つに「講義自体のエンターテインメント性」を挙げ、「学生自身が楽しめる、興味を持って学問に臨める要素が、講義には必要」と説明する。
日本文学の研究法の一つに、作品のストーリー様式を探る手法がある。「アニメも古典文学も、基本は同じ」と志水教授。学生にとって身近な作品を文学様式と照らし合わせ、考察する仕掛けだ。例えに日本書紀・水戸黄門・魔法使いサリーなどを挙げ、「主人公が、ある土地を訪れ、問題を解決し、去っていく。要約すると同じ様式の話なんです」。
主に文学部の学生らを対象とした「知のフロンティア」は、4年前から、ワーグナーの戯曲、時代劇の水戸黄門、特撮のウルトラセブンと、題材を変え開講してきた。今年は、近年放送されたアニメ『魔法少女まどかマギカ』が題材だ。
講義では、12話構成のアニメを、1話につき1講義ずつ、1年をかけじっくり考察。作品の「お約束」と称されるストーリーの構成や、作品に影響を与えた文学様式、社会背景などを探る。
「講義について『大学でアニメの授業なんて』という意見はまだありますが、その発想自体、前史的」と言い切る志水教授。「学校は『絶対的価値』を教える場所、という論争は昭和時代の価値観。現在各大学の文学部は『新しい価値』を求め、様々な作品をテキストとして扱っています。世間一般が考えるより、大学は遥かに前衛的で攻撃的」と挑戦的な笑みを浮かべる。
こうした講義への工夫は、私立高校で教鞭をとった時の経験が生きている。「学生に楽しんでもらうためには、負けないくらいこちらも楽しむ必要がある」。教授自身も特撮やアニメへの造詣が深く、「『まどマギ』も、僕好きなんですよ」と笑う。
教授の狙いは、学生の「時代に対応した広い視野と柔軟な発想力」を育てることにある。「僕が最近研究しているのは江戸時代に活躍した澁川春海と谷重遠、あとゴジラ。自分にとってはどれも延長線上にあり、繋げて考察するもの。学生にもこれは研究対象にならない、と視野を狭めて欲しくない。挑戦的に学問してほしい」とキラキラ輝く瞳で語った。
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