横浜市は現在市内4カ所(鶴見区・金沢区・戸塚区・港北区)にある認知症疾患医療センターの拡充を目指している。2020年度には5カ所を加え、全18区のうち2区1カ所の設置を見込み、当初予算案に2145万円計上。「予約から診断までの時間を短縮し、通院の利便性も高めたい」としている。
認知症疾患医療センターは、認知症疾患の保健医療水準の向上を目的とした施設。医療・介護機関と連携を図りながら、認知症疾患の鑑別診断、周辺症状と合併症に対する急性期治療、専門医療相談等の実施、地域保健医療・介護関係者等への研修も行う。
国が示すセンター設置の基準は、2通り。認知症施策推進総合戦略では、一般的な入院に係る医療を提供する「二次医療圏」に1カ所の設置が定められており、市としては「国の要件は満たしている」という立場。一方、国の精神疾患医療指針が示す基準は、高齢者人口6万人に1カ所の設置。同指針に沿えば市内15カ所設置が必要で、市は「この指針を基準とする自治体もあり、市民から(拡充への)指摘も頂いている」とする。
通院利便性を向上
18年に市は、市内医療機関等を対象とした「横浜市認知症鑑別診断に関するアンケート調査」を実施。初診予約から診断まで1〜2カ月要していることがわかった。また19年に実施した市内4カ所の同センターへの調査では、設置された場所の近隣以外からの来院につながっていないことも判明。これらを背景として新年度予算案にセンターの拡充が盛り込まれた。
青葉区の横浜総合病院臨床研究センター長で、神経内科医の長田(ながた)乾氏(日本認知症学会専門医・指導医)は「(未設置の)市北部等への設置で利便性向上、地域に根差した認知症医療や一層手厚い当事者・家族支援が期待できる」と話す。
「運営委託事業者の選定はこれから。早期受診、早期発見につながれば」と市担当者。今後、認知症に対する医療体制構築に向け、施設の機能評価を行うとしている。
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