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青葉区 コラム

公開日:2020.10.15

歴史探偵・高丸の「あお葉のこと葉」ファイル vol.6
「屋号 後編」

 「おんまし」という屋号がある。青葉区および、周辺の地域でよく耳にする屋号だが、地元の人に聞いてもその謂れは判然としない。



 「馬でも回したんじゃねぇか」と、ある地主さん。なるほど、お馬(おんま)回し…か。博労(馬喰)、馬車屋、馬医に馬の鑑定人など、馬を扱う職業がズラッと脳裏に浮かんだ。かつて、区内の各地で農耕馬による競馬が行われていた。その関係かもしれない。



 川崎市の資料の中に【領主が領内を馬で巡検したおりに、村の境界のところで馬の首を巡らした場所をオンマワシという】との説が記載されていた。と、すると職業でなく地名屋号になる。さらに、【洪水に見舞われたとき、川の流れを向う側へと必死に追い回した場所】という文章もあった。麻生区下麻生にある「恩廻」という地名について記された箇所だ。



 恩廻は鶴見川が大きく蛇行している地点の字名で、現在そこには「恩廻調整池」という、大雨などで溢れた川の水を地下の巨大トンネルに流して貯留する施設が建っている。こういった施設のおかげで鶴見川は洪水災害から免れているのだ。



 江戸時代、同じ場所に「五か村用水」の取水口があった。下流にある上鉄、中鉄、下鉄の三つの鉄村と大場村、市ケ尾村の五つの村に水を引くための灌漑用水で、江戸初期に小泉次大夫という代官によって整備された。



 川の水を(追い回す)という言い方にはどうも違和感がある。もしかすると、洪水ではなく、農家に「恩恵」をもたらす「水」をまわす。恩をまわす=恩廻し(オンマワシ)=オンマシ…になったのではないだろうか。水は天からの「施し」。施されたら施し返す 「恩まわし」です!ってね。



(つづく)



 さらに詳しい情報は、ブログ「歴史探偵・高丸のニッポン放浪ファイル」を御覧ください。

 

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