2025横浜市長選 検証・山中市政の4年〈上〉 敬老パス無料化、模索中 前回選公約 公平性と財源が課題
横浜市長選挙(7月20日告示、8月3日投開票)が迫ってきた。現職の山中竹春市長のほか、複数人が出馬する予定で、選挙戦は4年間の山中市政の評価が争点となる。4年間を振り返り、市政の課題を3回にわたって探る。初回は「敬老パス」の無料化について。
2021年の市長選で山中氏は公約に「75歳以上の敬老パスの自己負担のゼロ化」を掲げた。
敬老パスは、高齢者の生活支援策の一つとして1974年に始まった制度。市内の70歳以上の希望者に交付し、市営バス、民営バス、市営地下鉄などで利用できる。制度開始時は無料だったが、03年に自己負担金を導入。現在は所得に応じて年間3200円から2万500円までの自己負担金を設定している。
山中氏は敬老パス無料化を通して、高齢者の外出機会を増やし、健康寿命の延伸や介護予防などにつなげたいと考えた。市長就任時の21年度、交通事業者への負担金のうち、市費分は約105億円。23年度は約40万人にパスが交付され、負担額は約99億円だった。
利用に個人・地域差
市は利用実態把握のため、22年10月から従来の紙製パスをICカードに移行。24年5月に発表した1年間の状況によると、利用者約41万人のうち、利用回数の多い上位約12%の人が総利用回数の約41%を占めていることがわかった。区別の交付率は最高の港南区が約65%であるのに対し、鉄道駅やバス停から離れた場所が多い瀬谷区は約37%で大きな差があった。また、介護保険データと合わせて分析したところ、敬老パスの保有者は外出頻度が高く、5年以上保有する人は要介護認定を受ける割合が低い傾向もわかった。
免許返納者を対象
市は24年12月、75歳以上で運転免許証を自主返納した人に対し、3年間無料で敬老パスを交付する方針を明らかにした。今年4月以降の返納者を対象に10月から運用を始める。同時に移動手段が限られる地域で運行されているワゴン型バスなどの地域交通も敬老パスの対象とし、半額程度で利用できるようにする。
この4年間で山中氏が公約に掲げた敬老パス無料化は実現に至っていない。前回選で山中氏を支援した市議は「事業費や利用データを分析する必要がある」とし、前進しているとの見方を示す。一方、別の市議は「無料化には約100億円の費用がかかり、慎重な検討が必要」と否定的だ。
山中氏は6月11日の市長定例会見で「持続可能な制度にするため、専門部署と相談しながらデータ活用に関する研究計画を作成している段階」と現状を説明。「引き続き、検討を進めていきたい」と意向を語った。
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