横浜を舞台にした小説「イノセント・デイズ」を新潮社から上梓した 早見 和真さん 横浜市出身 37歳
勝負作の舞台は地元横浜
○…補欠部員の高校球児を描いた『ひゃくはち』(2008年)で作家デビュー。「イノセント・デイズ」は7冊目の著作となる。今著は、これまでの青春小説とは異なり、死刑囚となったある女性の一生を様々な視点から描いた社会派エンターテイメントだ。
○…1998年に起きた『和歌山カレー毒物混入事件』。世間がこの事件一色に染まる中「真実は何か」、そんな疑問が心のわだかまりとしてずっと残っていた。今著でその疑問に正面から向き合い、取材に2年、連載は1年におよんだ。「勝負作になる確信があります」と語る。自身が横浜出身とあって「勝負作の舞台は迷わず横浜でした」。桜木町から野毛・曙町・山手、また横浜駅周辺や寿町を意識した町も登場する。
○…「実は朝日新聞に内定してたんです」と苦笑い。しかし、学費の問題で4度目の留年、頼みの綱が切れた。3カ月の引きこもりから解放してくれたのは、既知の編集者からの電話だった。「言われたんです。書き手は書かなきゃ先に進まないって」。名門の桐蔭学園野球部出身ということもあり、高校球児を題材に書きたいという想いがあった。出版社でアルバイトをしながら1年半かけて執筆。それが処女作となった。
○…伊豆で妻と娘の3人暮らし。地域のソフトボールチームに参加し、「三番、ショートで監督。打率は2割2分」と笑った。仕事は「息を抜きたくない。体重は減るし、眠れないことも度々」と自身を追い込む。「今のやり方では絶対に身体が持たない。でもまだ数年は変われないかな」とこぼす。
○…小説の役割は「他者を想像すること」。昨今の社会状況について「ひとつの意見が幅をきかせている。絶望的に他者を想像できていない時代だ」と語る。作家として「1ミリも気を抜かない。裏切らない」と姿勢を正した。「いつか横浜に戻る時がくると思っています。また勝負作を書くとき、舞台は横浜かな」
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