戸塚区・泉区 人物風土記
公開日:2022.08.18
100歳を迎えても、自治会有志の交流会の発起人を務めた
黒沢 千利(ちとし)さん
平戸町在住 100歳
「悩まず、淡々とやろう」
○…芹ヶ丘自治会館で行う「大人のひろば」。コロナ感染対策を取りつつ、軽い飲食を楽しみながら世間話に花を咲かせる催しの発起人。この7月29日、生を受けて1世紀が経った。大正、昭和、平成を生き抜き、令和を迎えてもなお、知力・体力ともに衰えを感じさせない。「ご近所さんが気をかけてくれて。皆さんとお話するのは嫌いじゃないよ」。クリクリと遊び心いっぱいに黒目を動かす。
○大正11年京都生まれ。造船技術を学ぶため、現在の横浜国立大学への進学を機に上京。21歳の頃海軍に徴兵され、横須賀で終戦を迎える。太平洋戦争末期の生死を分けた時代を「世の中は理不尽なことが起こる。それが常態」と涼しげ。大学卒業後、国内最大手の造船企業に勤務し、設計を担当した。50歳の頃に関連会社の社長に就く。この間、日本が保有する造船技術を伝えるため世界18カ国を回っていたという。「まぁ仕事ばかりでね。妻と子ども二人にはもっと家庭的な雰囲気を味わせるべきだった」と頭をかく。
○…60歳で定年を迎えると、人材あっせん業に転職。75歳で退職、起業し10年間会社を経営した。圧倒的なエネルギーだが、60歳で初期のすい臓がん、75歳で心臓にペースメーカを埋め込む大病も経験。しかし「それ以外は至って元気」と胸を張る。リハビリで家を離れている妻の代わりに今も家事を行い、スーパーに自ら足を運ぶ。
○…95歳のとき初めて年齢を意識するようになったという。「120歳まで生きてギネスブックに載りたいね」と笑う。自分の意思でどうにもならいないことは、思い煩わないときっぱり。「淡々とやろう。悩んでいても仕方ないじゃない」。長寿の秘伝が開陳された瞬間だった。
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