石巻市に「お茶っこはうすオアシス」を開所した一般財団法人オアシスの事務局長を務める 池田 恵賜さん 小菅ヶ谷在住 40歳
「点」の活動、いつか「線」に
○…子育てやスポーツ、福祉など地域にある活力を連携させ、新たなコミュニティを創出しようと、本郷台キリスト教会の信者らが中心となって設立した一般財団法人オアシス。設立から約半年後、東日本大震災は起きた。付き合いのあるNGOが宮城県仙台市に拠点を設けたことから、同所を頼り10日後に被災地入り。これまでに47陣、約400人を現地に送っている。
○…出会いは偶然だった。その日もまだ大量の瓦礫が散乱するまちを、物資を積んだ車で走っていた。石巻市の八幡町に差し掛かったところで、車がパンク。立ち往生していると、同地域には物資が届いていないことを知った。車を修理する間、物資を配布。以後たびたび同町を訪れ、支援を続けた。町民の1人から「あなたたちは心を大切にしている。場所を使ってほしい」と、倒壊を免れた建物の提供を受けたのは5月ごろ。津波で1階が天井まで水に浸かったその場所を清掃し8月、「お茶っこはうすオアシス」をオープンさせた。
○…「お茶っこ」は石巻で「お茶出し」の意味。「気軽にお茶を飲み、語り合える場になれば」と名付けた。開所以来もちつきや、ゴスペルなどのイベントも開催。教会は海外ともつながりが深いこともあり、外国人を講師に招くこともあった。「金髪の人は町では珍しいらしくて」と笑顔。被災地に驚きや笑いを生んでいる。
○…本業は牧師。父も牧師だが「子どものころは神様を信じる意味は分からなかった」という。父の立場を考え、「良い子でいなければ」という窮屈さから非行に走った時期もある。息子の悪事を詫び、他人に頭を下げる親。それでも後で責められることはなかった。「愛を感じた。神様を信じる意味が分かったのは、その時」。心にさまざまな思いを抱える人々と関わる今、当時の経験が生きている。「『点』がいつか『線』になれば嬉しい」。心に寄り添い「本当の復興とは何か」を日々、考えている。