栄区視覚障害者福祉協会の会長を務める 三嶋 伸昭さん 上郷町在住 53歳
当事者として経験伝える
○…全盲や弱視の会員などが集まる栄区視覚障害者福祉協会。毎月定例会を行って情報交換をしたり、音楽や映画を楽しんだりと交流を深めている。同協会で2年前から会長に就任。区役所や区社会福祉協議会の協力もあって、今年初めて中途視覚障害者の引きこもり解消のためにリーフレットを作成した。「こちらから引きこもりの人は見つけられないので、近隣で気づいている人がいたら紹介して欲しい」
○…父親の仕事の関係で小学1年の頃から中東・クウェートで暮らし、帰国後に当時の横浜市南区へ。大学卒業後はゼネコンへ入社し、仕事に励んだ。順調に働いていたが、40代後半になって突然失明。全盲となり何もできない状態に「天国から地獄へ落ちたようだった」。外に出ることも嫌で引きこもった時期が1年ほど続いたが、家族や友人の協力で少しずつ外出もできるようになっていった。「音声パソコンを知ったことで、情報を得られたことが大きかった」。その後は杖を使った歩行訓練などにも積極的に取り組み、今では初めての場所にも1人で行けるようになった。
○…外に出ることが好きで、現在は愛犬・ベガの散歩が日課だ。また小さいころから海への憧れを持ち、クウェートにいた時には「海に浮かぶ大きなタンカーをよく眺めていた」と振り返る。今でも海は好きで、時には友人と釣りに出かけてアマダイやオニカサゴなどを釣り上げているという。
○…障害はあくまでそれぞれの人間の違いにすぎず「目が見えないこともひとつの個性」と話す。区内でボランティア活動を行うだけでなく、各地で講演や福祉教育にも取り組み、障害とはどのようなものなのか当事者として伝えている。「目が見える人も見えない人も皆で共に生きていくためには、まずはお互いが違いに気づき、理解し合うことが必要」。皆で共に生きる社会のために、自らの経験を周囲に伝えていく。