小さな紅葉を楽しむ 枕草子にも登場する「ナツヅタ」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
紅葉の季節となりました。紅葉は大きな樹木だけではなく、低木類、蔓(つる)植物、草本類でも見ることができます。その一つに、石垣や樹木等に絡む「ナツヅタ」があります。単に「ツタ」とも呼ぶ落葉蔓植物で、これによく似た常緑蔓性の「キヅタ」(異なる科)は「フユヅタ」といい、区別しています。
さて、古代から砂糖の代わりとして、重宝されていたものに「甘葛(あまずら)」という甘味料がありました。この甘葛の原料植物については諸説があり、「アマチャ」ではないかと言われていましたが、今では「ナツヅタ」を指しているようです。ナツヅタの樹液が移動する早春、茎の切口から樹液を集め煮詰めると、粘性のある甘い液になり甘葛ができます。清少納言の枕草子の中に、「氷室から出したかき氷に甘葛をかけたものが高貴なもの」と記されており、また芥川龍之介の「芋粥」には、ヤマノイモを切り込んだ粥を甘葛の汁で煮ると表現しています。
もう一つナツヅタで注目することは、葉の形が3型あることです。葉には写真のように単葉のもの、同じ単葉でも深い切れ込みがある3出葉のもの、そして3枚の小葉からなる複葉のものとがあります。落葉時にはどの葉も葉身から落ち、数日後葉柄が落ちるので、これらは全て複葉として扱われます。こうした複葉を「単身複葉」といい、ミカンの仲間も同じです。
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