子どもの遊び「相撲取草」 種はアリが運ぶ「タチツボスミレ」 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
「山路来て 何やらゆかし すみれ草」(松尾芭蕉)
春の日差しを受けて、淡紫色の可憐な花を咲かせる「タチツボスミレ」は、誰もが知っている花です。
スミレの花は、先端が5裂に分かれ、後方は細長い筒状をして、その中に蜜を入れた袋があります。この筒状の部分を「距(きょ)」といい、蹴爪の意味を持っています。この距の部分が、大工道具の「墨入れ」に似ているので、スミレの名がつきました。この距に入れた蜜は、舌を長く伸ばすことができる虫(ハナバチの仲間)だけがありつくことができます。
花茎は花弁と距との中間に位置しており、ヤジロベーのようにバランスをとっています。子どもの頃、2本の花茎を絡めて2人で引きあって勝負を決める遊びをしました。ここから「相撲取草」の別名があります。
果実は熟すと自力で種を弾き飛ばします。この種にはアリが好むエライオゾームという固形物が付着しており、アリは種を巣へ運び固形物を食べた後、巣の外へ捨てます。こうしてスミレは種を遠くまで運ぶことができます。
最近、街中のコンクリートの隙間に濃紫色の小型スミレをよく見かけます。これは、アリがコンクリートの下に巣を作り、捨てられた種が隙間から芽を出したと思われます。写真はその一例のスミレ、「ヒメスミレ」です。
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