季節の花【15】 海外でも「アオキ」の名 欧州で1世紀近く幻の実に 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
花の少ないこの時期は、色づいた実が目立ちます。「アオキ」もその一つで、緑を保つ葉の繁みに、赤い楕円状の美しい実が目にとまります。
アオキは日本から東南アジアにかけて分布し、湿った谷筋やスギ林に多く生育します。葉と茎に独特の臭気があり、耐病虫性、耐陰性、耐乾性そして公害に強い常緑低木です。雌雄異株で雌株は赤い実が美しいため、よく庭に植えられます。
1780年代、日本を訪れたヨーロッパ人が、冬でも枯れず赤い実のついたアオキの雌株を1株求めて帰国しました。しかしその後、雌株のみでは実がつかないことに気づき、雄株を求めて再度日本へ渡ろうとしましたが、当時日本は鎖国中で入国することができませんでした。そのためこの実は1世紀近く「幻の実」となりました。その後イギリスのプラント・ハンター(※)であるロバート・フォーチュンが雄株を求めて、長崎に入国し、横浜でやっと雄株を手に入れることができました。これをもとにヨーロッパで、数々の品種や変種を改良し、その数は日本をはるかに上回るほど多くつくられました。当初は「アオキバ」といい、学名も”Aucuba”と命名され、今でも外国では「アオキ」のままで呼ばれています。
次回は2月18日号掲載予定で、チューリップです。
(※)世界各国を回り、珍しい植物などを採取する人
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