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金沢区・磯子区 文化

公開日:2018.11.08

金沢区の作家大島さん
隠された「浜空」の悲劇一冊に
本紙記事が調査の発端

  • 著書を持つ大島さん。ノンフィクション作家として活動し、現在は「石巻学」という雑誌編集などを行っている

 金沢区在住のノンフィクション作家、大島幹雄さんの新書「語り継ぐ横浜海軍航空隊」(有隣新書/1000円・税別)がこのほど出版された。



 横浜有数の桜の名所である富岡総合公園(金沢区)には、かつて「横浜海軍航空隊」(浜空(はまくう))の基地があった。同書では、隊員らがこの基地から出発し南太平洋のソロモン諸島で戦った実録を、丁寧な取材をもとに克明に描いている。



 1942年6月のミッドウェー海戦後、戦局の最前線となっていたソロモン諸島。ガダルカナル島では日本軍による航空基地建設が進み、浜空はこの近くに位置する2島周辺を「ツラギ」と呼び、哨戒(敵機への警戒)のための拠点にしていた。



 戦闘が起きたのは同年8月。基地建設を察知した米軍が、ガダルカナルとツラギの攻撃を行う。1万人以上のアメリカ兵が海から空から攻撃してきた。しかし浜空はもともと偵察・哨戒を主な任務とする部隊。わずかな武器しかない状態で洞窟に身を隠しつつ、2日間にわたり抵抗したものの、数人のみを残し数百人の尊い命が奪われてしまう。



 「玉砕」は大本営によって固く隠された。この事実を伝えようとしたのが、九死に一生を得た浜空の元隊員らだった。大島さんは「この悲劇を語り継いできた人がいたことを残さねばという気持ちで書き上げた」と語る。



「今のうちにやらなきゃ」



 「富岡に住んで30年経っていたが、浜空の存在は知らなかった」と大島さん。本格的に調べはじめたきっかけは約4年前。毎年春に富岡総合公園で行われている「浜空戦没者慰霊祭」について取り上げた、本紙の記事を読んだことだ。取材対象は90歳前後と、高齢の人も多く「今のうちにやらなきゃという思いも強かった」と話す。



 現在、慰霊碑の周りを掃除するのが日課になったという。「最近落ち葉が増えてきたので、この本の原稿料で落ち葉掃除機を買うのがささやかな楽しみ」とほほ笑む。



 

 

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